三大映画祭週間2012
『フィッシュ・タンク』
小さなエリアしかしらず、劣悪な環境で親の愛情も不満足なまま育った子どもはどうなるか。
汚い言葉でしか自己表現できずに、コミュニケーションのとり方すら分からない少女。
それでも少女には夢がある。周囲に負けそうになりながらサバイバルする姿には心が痛む。
体つきは大人と同じになったのに、いつまでも子ども扱いの母親や小バカにする周囲の人たち。
そんな中で<
まともな扱い>をする異性に心動かされるのは、自然ともいえよう。
思春期の不確かさと<大人の世界へのあこがれ>を垣間見せて、傷つきながらも成長してゆく姿を描いてみせるアンドレア・アーノルド監督。
全てをさらけ出すように体当たりの演技を見せるケイティ・ジャーヴィス(ミア役)が素晴らしい。
演技経験のまるでない素人を道端でボーイフレンドと喧嘩している様を見てスカウトしたということだが、そういう内側に秘めたパッションの強さが生きている。
映画『SHAME シェイム』では流し目ひとつで女性を口説き落としただけのことはあるマイケル・ファスベンダーの好演も光る。さすが旬の役者は一味違う。
実のところ彼の役柄の奥行きが本作のそれに直結している。
少女のあこがれの存在にも知りたくない<別の側面>が存在しているのだ。
タイトルのFish Tankとはもちろん水槽のことで、彼女の置かれている状況を示す喩え。
その狭苦しさを表現するためだろうスタンダードサイズが採用されたのは。
暗示的に登場する馬もまた効果的。
ここまで見た中ではもっとも好きな映画。中産階級の名もなき人物を赤裸々に見つめているという点では、同国のケン・ローチあたりが好きな人には訴えるものがあろうか思われる。
是非ともアンドレア・アーノルド監督の名前は覚えておきたい。(というか、前の映画もちゃんと公開して下さい。)
2009年カンヌ国際映画祭審査員賞
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