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(…she dabs her face with a towel and looks down at it.
she holds it up)
"The shroud of Hedwig, ladies and gentleman"
（彼女は顔をタオルで軽くはたき、それを見下ろす。
そしてそれを持ちあげ）
「ヘドウィグの経帷子よ」
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椅子に腰かけて『Wicked little town』を歌い終わり、
フェイスタオルを顔にちょっとのせて息をつき、
タオルをながめて自分でびっくりし、客席にそれを見せるヘドウィグ。
隈どりのようにはっきりとタオルに写されている彼女の眼鼻立ち。
「ヘドウィグのデスマスク」
そう言いざま、客席にぽん、とそれを放る。
いつもそのタオルを求めて熱い争奪戦が繰り広げられた場面。
よく考えればあの一瞬であれほど鮮明にあとがつくわけはない。
あらかじめ用意されたものであろうことは分っていたけれど、
ヘドウィグがタオルにうつった顔を客席に示した姿を観ても、
それが何をあらわしているのか、まるで気付いていなかった。
「あれって『聖顔布』じゃないの？！」
と、先日Kさんからメールが来て、またしても呆然。
なるほど、言われてみればそれそのもののイコン（自印聖像）ではないか。
【聖顔布】
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イエスが十字架を担ってゴルゴタに向かう途中、
１人の女性がイエスの顔の汗を布で拭う。
するとイエスの顔がその布に写っていたという伝説。
この女性は、ギリシャ語のvera e ikon
（ヴェラ・エ・イコーン「真の顔」）に由来して、
ヴェロニカと呼ばれている。
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この伝承から、絵画や彫像の聖ヴェロニカは、
聖顔布を手にした姿で表されるというけれど、
これはまさに、ヘドウィグのあの時の姿を思い出させる。
ちなみに、キリスト教でいう聖遺物の伝説には、
「聖顔布」だけではなく「聖骸布」も。
【聖骸布】（Holy Shroud）
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イエス・キリストが磔にされて死んだ後、その遺体を包んだとされる布。
ただ一つ現存する「トリノの聖骸布」(Shroud of Turin)には、
生成りに近い象牙色の布の上に、痩せた男性の全身像が
ネガ状に転写されているように見える。
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”デスマスク”という表現は言い得て妙だったけれど、
今回、あらためてオリジナルスクリプトを読み返してみると、
ヘドウィグは”death-mask”（死面）ではなく、
”shroud”（経帷子、覆い、とばり）と言っているのだった。
聖骸布は”holy shroud"と言われている。
キリスト教文化圏のひとたちならば、一発でぴんとくる場面のはず。
こういう新しい発見で目からうろこが落ちるたびに、
いかに自分がそういうキリスト教的常識から遠いか思い知らされる。
こつこつと調べては示唆してくれるKさんに感謝。
*写真は左から、
・2008年（再演）時にグッズ販売されたヘドウィグマスクタオル
・エル・グレコ”聖顔布を持つ聖ヴェロニカ”1576年
〔St Veronica Holding the Veil〕
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