『
預言者』
なるほど、<その瞬間>のための150分だったか。
『リード・マイ・リップス』のジャック・オディアールが監督し、
カンヌでグランプリ受賞したフィルム・ノワールの力作。
家族も金もコネも学もないアラブ系の青年マリクが、文字通り<孤独な監獄生活>を送ることから話が始まる。
刑務所内では
世界の負の縮図ともいえる光景が見られる。
人種や宗教による差別・派閥争い。賄賂や暴行、略奪等々…。
コルシカ系が仕切る過酷な刑務所の中で、いかにアラブ系の青年マリクが<サバイバル>していくかが見もの。
適応能力に塀の外も中も関係ない。その意味で普遍的な話。
悪党にもかかわらず、少しずつ学習してゆく様は応援したくなる。
じっくり丁寧に描かれる刑務所生活の描写。余計なものを足さない演出には監督の自信がうかがえる。
セザールには<運命の分かれ道>となった理由が分からないのだろうな、全ては身から出た錆であるのに…。
憐れな様子が脳裏に焼きつく。
映画のために建てられたと言う刑務所のセットも見事だが、無名の役者が多いのもリアルさアップに一役買っているか。
主人公<マリク>を演じた
タハール・ラヒムの本格的なデビューとは思えないウマさには舌を巻く。
ニエル・アレストリュプ演じる
<セザール>の存在感も圧倒的。
一方で、移民の多いフランス国内においてはアラブ系・アフリカ系などの他民族が増えている社会問題も抱えているのだろうな、と考えさせられる面も見て取れて興味深い。それも犯罪の温床となりやすい<無知>や<貧困>という状況を伴って…。
そう考えると通り一遍の印象よりも実は奥は深いかも知れない。ラストシーンのさわやかな対比が見事。
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