原田芳雄さんの訃報には本当に吃驚した。
実は昨日の休日、主演映画『大鹿村騒動記』(2011年)を観るつもりで出かけたのに、
満席で入れず、また別の日に出直そう、とあきらめて帰ったばかりなのだ。
まさかその翌日亡くなるなんて。
観ていたら、それはそれでショックが大きかったかもしれないけれど、
先月も『奇跡』(2011年)で姿を拝見したばかりだし、実感がわかない。
最近はテレビドラマ『火の魚』(2009年)や、
是枝監督作品の『歩いても 歩いても』(2008年)など、
ちょっと偏屈で感情表現のぶきっちょな老人役が増えて来たものの、
私にとってはなんといっても上京後すぐに見た鈴木清順監督作品の
『ツィゴイネルワイゼン』(1980年)が強烈な印象だった。
荒らぶる神、というか、鬣をふり乱したライオンのような野趣あふれる存在感。
この作品は特別な作品。今も部屋にポスターを貼っている。
未だにそのイメージを背景に重ね合わせているから、
このひとを老人だと思ったことはなかった。
いくつになってもエネルギッシュで、
でも憎めない愛嬌のあるチャーミングな男性。
上京して『ツィゴイネルワイゼン』を観るその前に、
玉三郎さんのラジオ番組で、ゲストに原田芳雄さんを招いたことがあった。
その時、玉さんは『リンゴ追分』を歌って欲しいとリクエストし、
原田さんはギター一本であの歌を歌ったのだ。
ざくっと朴訥で、でもそれゆえの色っぽさがあって、
玉さんが、すごくいい、と感嘆していたのを思い出す。
舞台みたいに、ばあっと、散っているリンゴの花びらと、
その下に立っている娘が見えるようだ、と。
清順監督の『陽炎座』(1981年)や『夢二』(1991年)ではワキながら飄々と面白く、
黒木和雄監督の戦争レクイエム三部作の最後を飾る
『父と暮らせば』(2004年)の父親の、原爆を語る一人芝居は圧倒的で、
改めてすごいひとだと思い知らされたものだ。
まだまだいろんな役を演じていただきたかった。残念。
ご冥福を祈ります。
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