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2011年06月04日00:16

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5月29日、池袋シネリーブルにて鑑賞。
http://mbp-movie.com/

私はこの時代のことをはっきりとは覚えていない。
団塊の世代よりは一回り年下だから、
これらの事件が起きていた頃は、まだ田舎に住む子供に過ぎないし、
後にその時代を扱った小説などを通じて理解しているくらい。
身に応えるように生々しく体験しているわけではないのだ。

そういう位置の世代として、ちょっと引いた立場から見ると、
いったいこの学生運動のリーダーは何をめざしていたのか、
何のためにこんなことにのめりこんでいったのか、理解できない。
革命っていったい何?いったい何が変わりどう良くなったというのか?
時代全体が狂ったような熱を帯びて、
大きなうねりとなっていたのだろうと想像はしても、
意味のない殺害には共感も同情も出来ないし、
本当に馬鹿げた許せないことに思える。

松山ケンイチ演じる活動家・梅山は、
べたっとした長髪も、自分で自分の言葉に酔っているような熱気も、
ふてぶてしいほどの面構えも、まさに70年代の男に見えた。
『ノルウェイの森』でも好演していたけれど、昭和が似合うひとだ。
梅山の熱弁に回りのものは巻き込まれ、動かされてしまう。
中身はないくせに奇妙なオーラを持つキーパーソン。
他人を動かしながら、自らの責任は巧妙に転嫁する狡さ。
彼を得たことで、この作品はゆるぎないものとなったと思う。

対して妻夫木聡演じる沢田の、正義感と清潔感は際立つ。
好きな詩人や音楽が共通していることで、梅山に心を開くのはあまりに純情。
やさしすぎる。どうしてこんな胡散臭い男を信じて庇うのかとはらはら。
あの白いシャツは、いくら汗をかいてもタバコを吸っても、
臭くなんかならないだろう、と思えてしまう。
あまりにもいたいけなロマンチスト。
主人公ながらとても控え目で、ストイックな感じがする。

この沢田は、原作者の川本三郎氏にあたる役とのこと。
映画ファンとして、また路地歩き街散歩の愛好者として、
川本氏の書かれるものはずっと好ましく読んでいただけに、
過去にこんな出来事があり、逮捕もされたというのは衝撃的だった。
運命のいたずらのような巡り合わせ。
迷い、逡巡している表情が強く印象に残る。
最後の涙はたまらない。つられて思わず涙腺がゆるんだ。

忽那汐里(くつなしおり)演じる、写真モデルの倉田眞子は、
そう多くない登場ながら、非常に鮮烈で良かった。
無垢でまっさらで真実を見通すようなまっすぐな瞳。
もっと若い頃の常磐貴子にも似ているような気がする。
彼女と沢田の淡い関わり、映画館でのささやかなデート。
「私はきちんと泣ける男のひとが好き」という率直な彼女の台詞は、
ラストシーン近くの、沢田のこみあげてくる涙につながっているのだろう。

彼女の履いているぽっくりのような上げ底のサンダルは当時の流行り。
私もこんなの持っていた。なつかしい。
新聞社のごたごたと積まれた本や資料でいっぱいのデスク、
ジリンジリンとけたたましく鳴る電話、もうもうたるタバコの煙など、
時代の雰囲気は丁寧に作り込まれていたと思う。
何回か挿入される、沢田の映画館場面でも、上映作品に時代を感じる。
川島雄三監督作品『洲崎パラダイス』の新珠三千代と三橋達也も見えた。

演出面では、とにかく”タメ”時間が多かったという印象。
逡巡している沢田の表情や、襲撃された自衛官がじりじりと這ってゆくところなど、
息を詰めて立ち合っている間が多いのだ。
じっくりとみつめることを要求されているような。

梅山のグループメンバーで実行犯を演じる中村蒼、
いかにもインテリでクールな感じの韓英恵も良かった。
彼女はついこのあいだまで子どもだったと思っていたのに、
もうこんな役をやるようになっているのですね。早いものだなあ。
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