9月22日、有楽町スバル座にて鑑賞。
（この日の鑑賞ラストの三本目）
http://www.okannoyomeiri.jp/index.html
第3回『日本ラブストーリー大賞』ニフティ/ココログ賞を受賞したという
咲乃月音の原作は未読。
『さくら色 オカンの嫁入り』として舞台化されたのは知っていたが、
それも未見。
映画を見る気になったのは、大竹しのぶと宮崎あおいの顔合わせと、
キネマ旬報の作品特集で、川本三郎氏が
”向田邦子作品を思わせる家族ドラマ”と褒めていらしたから。
期待通り笑って、ほろっとさせられて、気持ち良い作品。
重量感のある二作品を見たあとの気分転換にはぴったりだった。
夫に先立たれたあと、一人娘・月子と二人でむつまじく暮らしてきた陽子が、
突然若い男・研二を連れて来て、結婚すると言いだしてのてんやわんや。
激しく反発する月子とあっけらかんとしている陽子のやりとりを、
あおいちゃんとしのぶさんが演じるのだから、面白くないわけがない。
ふわんとやわらかく、抜け抜けと明るく、
少女のような陽子象はしのぶさんの独擅場。
そんな母親の天衣無縫ぶりに、あっけにとられて目を剝いたり、
ぷうっとふくれっ面をしたり、表情がくるくる変わる月子の百面相ぶりも、
あおいちゃんファンにはたまらない。
天才女優二人の丁々発止のやりとりは楽しかった。
でも二人は決してお気楽に暮らしているわけではなく、
月子は勤めていた会社でストーカー行為を受けて退職に追い込まれ、
現在無職で外出恐怖症であることや、
陽子の唐突に思える結婚宣言にも、深い事情があることが追々描かれて、
その人情の機微に泣かされてしまう。
脚本も手掛けた呉美保監督の演出は、べたつかずさらりとしていて良い感じ。
金髪リーゼントに赤いジャンバーという派手な格好が目立つ研二は、
その外観に似合わず、素朴で純情で心やさしいひとだというのがすぐ分る。
見た途端、あれ、なんか親しみを感じるなあと思ったら、
『JIN-仁-』の佐分利や『龍馬伝』の池内蔵太で顔なじみの桐谷健太くんだった。
彼はどうもむくわれないながらも一所懸命な役柄が多い気がする。
目も口も大きく、にかっと笑うと人の良さが丸出しになって憎めない。
研二の派手な格好にも、やさしさゆえの事情があって、それも切ない。
婚礼の場での黒髪正装姿では、別人かと思うほどきりりと男前で見違えた。
二人が暮らす家の大家・ サク婆役の絵沢萠子さんや、
陽子の勤め先の整形外科医院の院長・村上先生役國村隼さんなど、
回りの人たちも安心して見ていられる味わい深いひとばかりだし、
月子の愛犬ハチもとぼけた味わいで、なんとも可愛い愛嬌者。
引き戸の玄関や縁側のある家も、月子がハチの散歩のため歩く町並みも、
古風でなつかしい風景で心地よい。
さりげない市井の暮らしがしみじみと愛おしくなる佳品だと思う。
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