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2010年10月06日00:55

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音楽劇・ACT泉鏡花(東京グローブ座)

10月3日(日)13:00〜 東京グローブ座にて観劇。
上演後に主演の木の実ナナさんと、
作・演出の加藤直さんによるトークショーも行われた。
http://www.duncan.co.jp/web/stage/act-kyouka/

最初に企画を知った時、これはいったいどうなるんだろう、と
まるで予想がつかなかった。
なにしろ玉三郎さんの『天守物語』によって鏡花にめざめ、
全集はすべて読破し、卒論も鏡花だった私にとって、
『天守物語』『海神別荘』は原点なのだ。
新派の『婦系図』もいろんなキャストで見て来た。

過去にも寺山修司や花組芝居などが鏡花をアレンジしてきたけれど、
AKB48やStudio Lifeのメンバーで鏡花がどう料理されるというのか。
下手をすると単なる見せ物学芸会に堕さないかという不安大。
まあちょっと鏡花の女のイメージではないにせよ、
木の実ナナさんの舞台女優としての存在感には絶対の信頼を寄せていたから、
彼女がうまく舞台を引き締めてくれるのではないかとも期待。
ともあれ、自称・鏡花研究者の端くれである私が、
せっかく自宅にこんなに近い劇場でやる鏡花物を見逃す手はあるまい、
と参戦した次第。

出演者の世代が大きく分れているだけに、客層もさまざま。
普段私が見るような芝居ではお目にかからないような若いひとも多い。
客席に入る前に、永六輔さんの姿をお見かけした。

ステージには紗幕があり、大きな月が映されている。
この月には兎が映されることもあり、
後には「天守物語」の獅子頭の顔ともなっていた。
舞台装置はごくシンプルで、象徴的。

始まってすぐのプロローグでは、ナナさん演じるすゞ(鏡花の女房)が、
お人形を抱えての一人芝居。
ナナさんの気風のいい台詞が気持ち良く、ちゃんと鏡花になっており、
おお、これはなかなかいいぞ、と嬉しくなったところで、
AKB48メンバーの歌と踊りになるのだが、これは正直違和感が強かった。
一人ずつのソロの部分ともなると、力の無さが歴然となる子もいる。
この後、違う話に切り替わるたび、衣装替えして歌と踊りで繋ぐという段どり。
私にとってはこの転換部分はむず痒いような気分で、落ち着けなかった。

一連の物語の外枠には、現実の鏡花(鏡太郎)とすゞが居て、
そこに狂言回しのような卯(う)@宮菜穂子と、
酉(とり)@三浦亮介がからんで話を回してゆく。
このお二人は台詞も動きもきびきびとキレが良く、
コミカルさもあって好印象。
そして鏡花先生を演ずる近藤正臣さんの可愛らしいこと!
雷が怖くて震えあがり、エレベーターが怖くて真ん中でうずくまり、
極度の潔癖症で、なんでもぐらぐら煮立てて食べたという鏡花の変わりものぶりを、
茶化すような卯と酉の台詞に合わせて、動いている鏡花が微笑ましい。
鏡花ファンなら周知のエピソードばかりで、
なるほどこれはずいぶん鏡花を知っているひとの脚本だなあと感じた。
(トークショーで、作・演出の加藤直さんは鏡花の大ファンだと知り、納得)

舞台上では、いろんなお話が進んでゆく。
第一景:絵本の春
第二景:オペレッタ海神別荘・PART1
第三景:湯島の境内・前篇
第四景:オペレッタ海神別荘・PART2
第五景:湯島の境内・後篇
第六景:天守物語
エピローグ:滝の白糸

あまりに有名な『湯島の境内』のお蔦と早瀬の別れの場面を、
ナナさんと正臣さんが演じるのだが、
これが想像以上に良くて涙ぐんでしまった。
下町っぽいからっとした台詞回しで、本当に可愛いお蔦。
たてわくの着物もいいなあ。
「あたし、苦労が楽しみよ」などという、人口に膾炙した台詞が、
実に新鮮に聞えて、しみじみと胸に染みる。
対する正臣さんの早瀬は、往年の鶴田浩二を思わせる二枚目ぶり。
すらりとした着流し姿もさまになっていてさすが。
ややはしょりながらも、かなり忠実に再現される鏡花の台詞のやりとりに、
ああ、やはり鏡花の言葉は綺麗だなあ、と堪能した。
トークショーでも語られていたけれど、
鏡花の台詞は語って気持ちよく、耳に響いて音楽的なのだ。

『海神別荘』と『天守物語』は若手(AKBとStudio Lifeメンバー)
によって演じられ、ちょっと余裕はなかったけれど、
それなりにかなり頑張っていたと思う。
まあ『天守〜』は玉さんの富姫で何十回となく見ているのだし、
『海神〜』も海老蔵さんの公子や宮沢りえちゃんの美女で見ているのだから、
比べるのは酷というもの。
富姫役の秋元才加ちゃんはなかなかきりっとした美貌。
全体に生硬な印象は否めないのだが、毅然とした雰囲気は悪くない。
『天守〜』」では、卯を演じてきた宮菜穂子さんが薄を演じていたが、
AKBメンバーのなかに混じると、やはりきわだって台詞が上手い。
舞台の上に立つと役者の力量は一目瞭然だなあとつくづく思う。
正臣さんは最後に近江丞桃六として舞台を締め、風情があった。

ちょっと未消化な部分もあるけれど、全体的に面白い企画だったと思う。
若い世代への鏡花世界の橋渡しになれば嬉しい。
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