mixiユーザー(id:949383)

2006年06月11日10:51

37 view

嫌われ松子の一生

映画館を出たとたんにこの作品を好きか嫌いかと問われたら、
即答できず口ごもってしまっただろう。
それはけれん味たっぷりのつくりから来ている。
私にとって映画は同化できるか出来ないかで決まるから、
あまりに戯画化され過ぎていると
入り込むことが出来なくて戸惑ってしまう。
原作に惚れ込んで主役を熱望した中谷美紀さんも、脚本を読んだ時は、
原作にない小ネタや多くの入れ事に驚いて疑問を持ったというけれど、
その気持ちは分かる気がする。ここまでやらなくちゃならないのかと。

けれど数日置いて思い返すと、
やっぱりこうだからこそ映画化できたのだろうなと納得してきた。
だまされて転落して、尽くして捨てられて、放浪して。
次々と不幸がおそいかかるこのヒロインをリアルに描いたら、
苦しくて哀しくて正視に耐えないだろう。
魚眼レンズで見たような世界、テンポのよいカット、耳に残る曲の数々。
ディズニーアニメのような画面のなかを疾走していくヒロイン。
極彩色に飾られたおとぎ話。
どれだけ手間がかかったことだろう。これは相当な力技だ。
それに乗せられ、すんなりと見せられてしまったあと、
やはり松子の人生は心にどっしり根を下ろす。

松子さんは私より一回り上の世代だけれど、
流行歌とともに描かれる彼女の生きてきた時代の
肌合いは分かる気がする。
子どもの目にキラキラと輝いていたデパート。
サイケデリックなファッション。キッチュなアクセサリー。
面白い時代だったのかもしれない。
音楽というのは強い。一瞬でその時代に飛ぶ。

映画はそれでも前半に比べると、後半の方が少しリアルで重い感じ。
自分の実年齢に近くなってくるからなのかな。
若い観客が笑う場面でも、私にはとても笑えないところがあった。
若いって残酷。
思い出の数、それまでの体験によって人の立ち位置は全然違う。
それにしてもあの死に方は哀しい。
あんなところで彼女の昔ながらの女教師気質が出てしまうとは。

なんだかんだ言っても私はやっぱり松子さんが好きなんだ。
たとえ余所目には愚かしくてもその一途さに共振してしまう。
トルコに勤める時も一所懸命だもの。
素人女に負けるな、がんばれ職業婦人!というマクラとともに歌われる
漫談の寒空はだかさんの持ち歌「プロ売女(プロバイタ)」を
思い出してしまった。
常に困難な役に挑み続け、演じきった中谷美紀さんの熱演に拍手!
病弱な妹を演じた市川実日子さんも素晴らしく、
映画のラストでは涙が出た。このひとの顔はすごい。

男達のなかで印象に残ったのは…
やっぱり要役の伊勢谷くんのかっこよさ。
彼は結構レトロな格好が似合う。
劇団ひとりの不思議な存在感も好き。
太宰治気取りの作家の役、クドカンだったというのは、
あとで確認して初めて知りました。
このひとはヒゲなんかはやしてもかえって童顔が目立っちゃうんですね。
荒川良々はどうしてもひとくせありそうで良い人に見えません(笑)。
0 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2006年06月>
    123
45678910
11121314151617
18192021222324
252627282930 

最近の日記

もっと見る