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2009年11月25日01:58

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「最後の忠臣蔵」あれこれ

<映画化のニュース>
”役所広司&佐藤浩市ダブル出演で映画「最後の忠臣蔵」始動”
というニュースが飛びこんで来たのは、11月4日のこと。
[eiga.com 映画ニュース]
http://eiga.com/buzz/20091104/1

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池宮彰一郎の人気小説を杉田成道監督が映画化する「最後の忠臣蔵」に、
役所広司と佐藤浩市がダブル出演することが決まった。
洋画メジャーのワーナー・ブラザースのローカルプロダクション作品で、
「忠臣蔵」を題材にした映画としては「忠臣蔵外伝/四谷怪談」
「忠臣蔵・四十七人の刺客」(ともに94年)以来15年ぶりの“銀幕復活”となる。

そのほかの出演は、元太夫役で新境地を開拓する安田成美、笈田ヨシ、
山本耕史、伊武雅刀ら。
11月8日に京都でクランクインし、2011年正月第2弾として全国で公開予定。
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http://wwws.warnerbros.co.jp/chushingura/

洋画メジャー会社の制作・配給ともなれば、
世界に向けて広く展開してゆくことになるのだろう。
そういう時代劇に山本耕史くんがキャスティングされたのは、
ファンとして嬉しい。また新しいステップだ。
原作は未知の作品だったので、さっそく読んでみた。

<原作>
池宮彰一郎著『最後の忠臣蔵』(角川文庫、2004年)。
この作品は、一昨年亡くなられた池宮氏の
「忠臣蔵三部作」と言われる一連作品の二作目で、
最初は新潮社から『四十七人目の浪士』(1994年)として出たものを改題したもの。
(他二作は『四十七人の刺客』『その日の吉良上野介』)
大石内蔵助の命によって討ち入り前後、浪士たちの結盟から離脱し、
苦難に耐えつつその役割を果たした寺坂吉右衛門と瀬尾孫左衛門を描いた小説。

「仕舞始(しまいはじめ)」「飛蛾の火」「命なりけり」「最後の忠臣蔵」の
四つの章に分かれていて、それぞれ短編として独立して読むことも出来る。
物語の主人公はやはり寺坂吉右衛門。
足軽故に軽んじられ、卑怯者とそしられ、
それでも内蔵助の申し付け通り、生き証人としての役割を果たすべく必死に生き、
討ち入り浪士たちの遺児と家を救うために、命さえかけることに胸打たれる。

瀬尾孫左衛門の登場は最終章の「最後の忠臣蔵」のみ。
この章では、討ち入りからすでに十六年たっている。
彼は討ち入り前に脱盟したことになっていたが、実はそれも内蔵助の命令。
内蔵助が最後に妻とした一力茶屋の娘・可留(かる)の世話をひそかに頼まれたのだ。
彼女が内蔵助のあとを追うように果敢なくなったのちは、
忘れ形見の可音(かね)を苦労しながら育て上げる。
その甲斐あって美しく教養ある娘に育った可音を、ふとしたことで見かけ、
一目惚れして嫁にと願うのが、裕福な呉服商・茶屋四郎次郎の跡取り息子・修一郎。
最後にはめでたく婚礼の運びとなり、可音の晴れの姿を見届けた孫左衛門は、
自らの命を絶つ。

<感想及び配役考察>
もうとにかく吉右衛門が可哀想でならなかった。
「死ぬるほうがどんなに楽か」と何度も繰り返される通り、酷な立場。
義理堅く、けなげで、志堅固。だからこそ内蔵助に見込まれたのだが、
まさに滅私奉公というか、普通の幸せなど望むべくもない責務。
ことに、流転の果てにようやく一緒になれるかと思う女性に巡り合ったあと、
乞われてお家のために捨石となる覚悟で自首し、
そのおかげで討ち入り浪士たちの遺児たちも許される運びとなったものの、
また独り身となってしまう「命なりけり」には泣いた。
演ずるは佐藤浩市さん。吉右衛門の苦難の十六年を、どう見せてくれるだろう。

孫左衛門にしても、男手ひとつで、身を隠しながら内蔵助の娘を立派に育てるのは、
並大抵の苦労ではない。しかもそれは他のひとからねぎらわれることもなく、
自らは卑怯者の汚名をかぶっている。
こちらは役所広司さん。ダブルキャストの扱いからして、
映画のほうは孫左衛門の部分もふくらませて、両者ない交ぜに描くのかもしれない。

大石内蔵助はなんと過酷なことを二人に命じたものか。
しかし何回も繰り返し語られるのは、その内蔵助の人となりの魅力である。
先々までも見通し、隅々にまで気を配り、柔軟な頭で的確に処置をして逝った。
わずかな間情けをかけた女たちも、怨むどころかそのことを支えに生きてゆく。
女も男も慕ってやまない人物。
「聞く程に大石という者、才知といい、眼力といい、よほど優れた…
神の如きものであったようだの」と作中で言われるのもむべなるかな。
このひとあってこそ、吉右衛門も孫左衛門も艱難辛苦に耐えるのだし、
可音は凛として、父の娘であることを誇りに思っているのだ。

配役ニュースの第二報で、この大石内蔵助を片岡仁左衛門丈が
演じると知ったのは、嬉しい驚きだった。
”片岡仁左衛門が映画界へ討ち入り…「最後の忠臣蔵」で大石内蔵助”
http://hochi.yomiuri.co.jp/entertainment/news/20091117-OHT1T00019.htm

歌舞伎でさんざん演じられてきた『忠臣蔵』とはまた違う作品だけれど、
皆が「このひとのために」と心に抱く中心人物として、まさに適役。
耕史くん演じる茶屋修一郎は、内蔵助の娘を娶るわけだから、
直接出会うことはないけれど、内蔵助の娘婿ということになる。
なんだか嬉しいな。

茶屋修一郎は商人の息子ながら、武士にあこがれ武芸を好み、
筋骨たくましく凛としている、との描写。
どうせなら町人ではなく侍の娘を嫁にしたいと高望みするため、
身を固めるのが遅れていたところへ、偶然可音を見初め、
願いかなって結ばれるという幸せ者。
さんざん苦労して育て上げた孫左衛門から掌中の珠をかっさらってゆくようで、
孫左衛門の哀れが際立つけれど、
修一郎は陽の当たる明るい場所の象徴のようなものなのだろう。

<関連番組・舞台>
観ていなかったが、この作品は5年前にNHKの金曜時代劇になっている。
http://www.nhk.or.jp/drama/archives/saigono/index.html
主役の吉右衛門を演じたのは、上川隆也さん。孫左衛門は香川照之さん。
申し訳ないけれど、この年は大河の『新選組!』だけでいっぱいいっぱいで、
他のものはすっとんでしまっている。
番組HPの人物紹介を観ると、吉右衛門が関わる女性などは原作を整理するかたちで、
一人にまとめたり、少し人物相関図は変わっているようだ。

そして、今年は舞台化。
来月の12月に、明治座公演。主役の吉右衛門は中村梅雀さん。
http://www.meijiza.co.jp/info/2009/12/main.html
先日泉岳寺で公演成功祈願などされた模様。
http://hochi.yomiuri.co.jp/entertainment/news/20091113-OHT1T00201.htm
興味はあるけれど、12月は忙しいから観に行く余裕はないかもしれないな。

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