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2009年08月25日01:11

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ドリアンの表情と小物類(8月24日)

8月24日夜観劇。席は最前列の下手寄り。

この舞台ではセットの階段上部への上り下りが頻繁なので、
最前列はかえって見づらいかと心配していたけれど、
幸いあまり道具とかぶることなく見えたので助かった。
細かい表情や衣裳のあれこれも、つぶさに見られて満足。
今回は初日のあと二回目の観劇なので、
段取りが分かっているぶん、落ち着いて細部を見ることが出来た。

ひらひら衣装、くるくる巻き毛ではないけれど、
このドリアンはクールにうつくしい。
銀色の髪は鏡のように色を映し、ライトによっては金色のようにも見え、
また白髪とも見えて、なんとも神秘的。
異世界のひとというか、むしろ人間ではないもののよう。
衣装は前半がグレー、後半が青で、いずれもやわらかな色合い。
布地がヘリンボーン(杉綾)だというのも初めて知った。
派手ではないけれど、カフスボタンに至るまで色調を揃えて丁寧につくってある。
ドリアンの髪を束ねるリボンも、綺麗な光沢のある青。

間近で見るとその表情や仕草の細やかさ、キレのある動きは圧巻。
わずかな瞬間にぱっと変わる表情は、めくるめく万華鏡のよう。
目をむき、くっとにらむ顔には息が詰まりそうになるし、
眉を寄せて、綺麗な涙を流していると、胸がいっぱいになってしまう。
ヘンリーとバジルを誘って劇場に臨む場面、
紅い薔薇の花を一輪手にして、そわそわと何度もタイを直したり、
カフスの具合を気にしている様子は、少年のよう。
実際にはそこにない鏡をのぞきこんでいるのが、とてもよく分る。

シビルへの容赦ない言葉は、子どもの残酷さそのもの。
子どもは我慢を知らないし、相手を思いやったりもしない。
嫌なものは断固として拒絶してしまう。
考えてみれば、父も母も物心付く前に亡くなってしまい、
財力だけはあるものの、肉親の情など薄そうな祖父の家で育った彼は、
親身な愛情など知らないまま大人になってしまったのかも。

最後のあたりのドリアンは、可哀想でたまらない。
ヘンリー卿との対峙で、二人の対照がくっきり出る場面。
「善人になりたい」「自分を変えてみせる」と涙ながらに言い、
ヘンリーから贈られた指輪を抜いて、彼と決別するドリアンはあまりに純粋。
彼が去った後、複雑な笑い声をたてるヘンリーは、
『ファウスト』におけるメフィストフェレスのように思えた。

<断片的な感想、観察>

・音楽

前嶋さんのピアノの生演奏も間近で聴けて幸せ。
お姿のほうも、ドリアンと同じような白いシャツや
ベストを着ていらっしゃるのがよく見えた。
ドリアンの心情にそっと寄り添って奏でられる旋律は印象的で、
頭のなかでずっと鳴り響いている感じ。
繰り返されるメロディはすでに覚えてしまった。
サティのジムノペディを思わせるものもあり、どれも良いけれど、
シビルへの恋を語る時のやさしげな曲には、胸がきゅんとなる。

・指輪

ヘンリーがドリアンと出会った時に贈った指輪は、赤い宝石。
彼はこれを右手の薬指にはめる。
もともと左手の小指と人差し指にも指輪をしていたので、
(小指は銀のみ、人差し指は黒っぽい宝石)
ドリアンは合わせて3つの指輪をしていることになる。

・「僕」と「俺」

ドリアンは自分のことを「僕」と言ったり「俺」と言ったりする。
初日では「オレ」という一人称がドリアンに似つかわしくないような気がして
びっくりしたのだが、どうもこれは相手によって使い分けているようだ。
ヘンリー卿に対しては敬意をはらって「僕」。
バジルに対しては「俺」。
気の置けない関係というか、上からの目線でしゃべっているのだろう。

・酒

舞台下手の小テーブルの上に何度も置かれるアルコール類。
耕史くんの酔っ払い演技の上手さはいまさら言うまでもないが、
何度もグラスを空ける印象が強かったので、今回は数えてみた。

(1)バジルの屋敷
絵のモデルとして訪れ、ブランデー(たぶん)の瓶から
自らグラスに注ぎ、優雅に飲み干す(一杯のみ)。

(2)ヘンリーの屋敷
ヘンリーが注いだのは何の酒か分からないけれど、
装飾的な奇麗な模様の瓶から小さめのグラスに注いでもらって、
二人して飲む(一杯のみ)。
ここまではごく尋常で上品な飲みぶり。

(3)ドリアンの屋敷
来訪したヘンリーの口からシビルの死のことを聞き、ショックを受けて、
グラスにブランデーを注ぎ、二杯空けてしまう。
動揺ぶりがありあり。
「ケシの種を蒔かなくては。アルコールじゃ足りない」との台詞に、
「阿片はいかん!」とヘンリーが止めるのは、後の伏線。

(4)ドリアンの屋敷
一夜明けた朝、シビルの死を報じた新聞を手にバジルが訪ねてくると、
二階から現れたドリアンは、ワイングラスを片手にすっかり出来上がっていて、
足元も少し怪しい。
手にした分を飲み干し、継ぎ足したもう一杯もあっと言う間に空け、
さらに一杯注いだところで、肖像画を展覧会に出したいと切り出され、
ぴくん、としてグラスを置く。これは飲まず仕舞になった。

(5)ドリアンの屋敷
舞台後半は15年後。パリに発つ直前のバジルが訪ねてくる。
ドリアンはブランデーを勧めるが、バジルは断る。
このグラスを自分で手にする。

・阿片

この場面には息を呑んでしまう。
妖しげな紅い照明に染まるドリアンの白い顔。
横たわって放心したような表情。軽く開いた唇の紅さ!
セクシャルな場面などない舞台のなかで、
この顔は本当にセクシーでぞくぞくする。

ただ、薬物の吸引場面というと、
昨今繰り返し報道されている事件のことを連想せずにはいられない。
なんというタイミング。なんだか生々しい。
事件当事者の彼女が、ついこの春には、
彼の音楽番組に楽しげにゲスト出演していたこともあり、複雑な気分になった。
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