mixiユーザー(id:949383)

2009年06月20日01:10

1571 view

こころの王国〜童謡詩人金子みすゞの世界

先月17日に、横浜の放送ライブラリーhttp://bpcj.or.jp/access/に出かけ、
ずっと気になっていた過去のNHKスペシャル番組を見てきた。
「こころの王国〜童謡詩人金子みすゞの世界」(NHKスペシャル)
(1995年8月27日放映)
http://www.tvdrama-db.com/drama_info/p/id-30906
http://archives.nhk.or.jp/chronicle/B10001200999508270130122/
素晴らしい童謡詩を数多く生み出しながら、長い間忘れられ、
その後発見された作品が全集として世に出てからは、
すっかり有名になった詩人金子みすゞ http://www.jula.co.jp/type_c.php
の短い生涯を描いたドキュメンタリードラマ。

一度読んだら忘れられない詩の数々をおさめた全集は、
発売後まもなく読んで、心打たれたけれど、
不幸な結婚から運命の歯車が狂ったように、死に至った過程は痛ましく、
涙を抑えられなかった。
--------------------------------------------------------
みすゞ(本名テル)は、二歳上の兄の堅助(けんすけ)、
二歳下の弟の正祐(まさすけ)との三人きょうだいだったが、
弟・正祐は、物心のつかぬ二歳まえに、
子の居ない下関の叔父夫婦に貰われて行き、体面上は従兄弟となった。
学校を卒業したあと、テルは叔父の店を手伝うようになり、
教養豊かで文学的才能のあるやさしい彼女に、正祐は惹かれてゆく。
叔父は彼が養子であることを秘していたから、
正祐は最初、実の姉弟であることを知らなかった。
心配した叔父たちは、テルを早く片付けようとして、
店員の一人との結婚を勧め、テルは正祐のことも慮り、
彼に大反対されながらもこれを承諾する。
夫との間に一女を設けたものの、もともと女遊びの盛んだった彼から
梅毒をうつされ、詩作まで禁じられて、とうとう離婚を決意。
しかし夫は親権を主張して彼女から娘を奪おうとし、
ついに彼女は遺書を残して自殺する。
--------------------------------------------------------
あんなに心やさしい詩を書いたひとの実人生の最後は痛ましいけれど、
複雑な肉親の絆は、なんとも劇的。
彼女と同じく芸術的な才能があって、童謡の作曲などに手を染め、
童謡詩を書くみすゞと励ましあいながら創作活動をしていた正祐は、
彼女が実の姉とも知らず心を寄せ、真実を知らされて衝撃を受けるのだが、
このドラマで彼を演じているのは、当時18歳だった山本耕史くん。

学帽をかぶり、袴姿に下駄履きで仙崎の町を歩いてくるところだの、
白地の十字絣など着て、オルガンをひいている様子だの、
みすゞの訃報を受けて東京から帰る列車の中での、
憔悴しながらも品のあるソフト帽の姿だの、
純でナイーブな昭和の文学青年像が実に似合っていて良かった。
「私の未来のワイフたるものは照ちゃんのやうな人がほしい」
などというナレーションにどきっとする。
これは実際の正祐氏の日記から引かれている言葉。

山口県出身者である耕史ファンとしては、
耕史くんが長州弁をしゃべってる!ということにも感激。
もっともあまりなまりもなく、ごく標準に近い台詞だったけれど。
海をバックにした岩場で、
「誰か好きなひとはおらんのかね。居るならそのひとと結婚すれば」
と必死に縁談に反対するところや、
姉だと分かってショックを受け、家に帰ってから
「テルちゃんは僕の姉ちゃんやった」と、
はっと腕を目にあてて泣くところなど、特に印象に残った。

正祐はのちに雅輔と名乗り、劇団若草を創立した人。
若き日に童謡の作曲などを目指したことが、そういうことに結実したのだろうし、
耕史くんは昔この劇団若草に所属していたのだから、
ご縁があったのだなあと思ってしまう。

ヒロインのみすゞ役は、小林綾子さん。
「おしん」の少女時代を演じた頃の、子役の面影がまだ残り、
素朴で純な、ちょっとふっくらした可愛らしさが本当にぴったりだった。
口の重そうな、つつましい感じも良い。
劇的な人生だけに、その後何度もドラマ化や映画化されているけれど、
彼女が一番似つかわしい。

その後みすゞの生涯については、2001年に
舞台、民放ドラマ、映画と一気に製作された。
参考までにみすゞと正祐の配役を挙げておく。
舞台は未見だが、TBSドラマの松たか子さんは、
台詞がやっぱりしゃきしゃきと江戸前のようで、
長州のひとはこんなテンポじゃないなあと違和感があったし、
映画の田中美里さんもすらっとしすぎて、イメージと全然違う。

加瀬くんの正祐役は残念ながら全然思い出せないのだが、
耕史くんと加瀬くんが同じ人物を演じたことがあるというのは興味深い。
(そういえば「陽炎の辻」磐音役の候補の一人でもあったとか)
加瀬くんも昭和が似合うし、役によってまったく色を変えるひとだと思う。
その後も舞台化はあったようだが、
みすゞと母に焦点を当てたものや、朗読一人舞台なども多いようだ。

・『こころの王国〜童謡詩人金子みすゞの世界』(NHKスペシャル)
(1995年8月27日放映)
みすゞ:小林綾子
正祐:山本耕史

・『空のかあさま』(舞台)
(2001年5月4日〜7月1日- 芸術座 作:大薮郁子、演出:石井ふく子)
みすゞ:斉藤由貴
正祐:松村雄基

・『明るいほうへ明るいほうへ−童謡詩人金子みすゞ』(TBSドラマ)
(2001年8月27日放映)
みすゞ:松たか子
正祐:三宅 健

・『みすゞ』(映画)
(2001年10月27日公開、紀伊國屋書店制作、監督:五十嵐匠)
みすゞ:田中美里
正祐:加瀬亮
0 2

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2009年06月>
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
282930    

最近の日記

もっと見る