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2009年02月01日08:41

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新春名作狂言の会「佐渡狐」「釣針」(新宿文化センター)

1月23日、新宿文化センターにて観劇。

東西の狂言を代表する野村万作さんと茂山千作さん。
その両家によるお正月の合同公演「新春名作狂言の会」は、
今年でもう11年目になるという。
お手頃料金で、両家の演者による解説トークと、
それぞれの家による名曲が一つずつ見られるお得な公演。
うかつにもこれまで知らなかったけれど、とても楽しかった。
都合がつけば、来年も是非行きたい。

<解説>
まず茂山千三郎さんの「佐渡狐」の解説があり、
あとから野村萬斎さんが加わって二人のトーク。
萬斎さんを生で拝見するのは久々。
さすが世田谷パブリックシアターの芸術監督をなさっているだけに、
解説やトークは慣れてらっしゃる感じ。

家によって同じ曲でも演じ方が違うという話に続き、その見本として
小舞「宇治の晒(さらし)」を同時に舞ったのが興味深かった。
千三郎さんが下手側。萬斎さんが上手側。
基本的には同じ詞章なのに、節回しがやや違うし、動きも違う。
ネガとポジのように互い違いになる振りもあるし、
ところどころズレたりもするのに、急にまたぴたっと合ったりして、
最後は同時に終る。
滅多に見られないものを見せていただいた。

もとは同じものが、それぞれの家で違う進化を遂げていったのだなあ。
いつどんなふうに枝分かれしていったのだろう。
謡でも宝生流と観世流は、謡い方がまるで違うものね。
(私の母と父も謡をやっていたけれど、各々宝生と観世だったので、
一緒に合わせるのは困難だったらしい)

千三郎さんが「佐渡狐」の出の用意のため引っ込んでから、
萬斎さんの「釣針」の解説。
曲中に出てくる「えびす」の字のことやら、衣裳のことなど、
たいへん面白くて分かりやすかった。
七福神の一人である「えびす」は恵比寿、夷、戎など色々な字をあてるが、
蛭子と書く場合もあるから、台詞で「ひるこ」と言っているのは
えびすのことなのだとか、
大名の裃は肩衣と袴が共布だから、上下揃いのツーピースで、
ぴしっとした感じになるけれど、
太郎冠者の場合は小袖、肩衣、袴の色や柄が各々ばらばらなので、
ポップでくだけた感じになるとのこと。
洋の東西を問わず、道化者の衣裳が派手な色合いになるのはお約束。
太郎冠者たちの、大振りな横縞や格子柄の小袖、
お野菜などが大きく染め抜かれた肩衣などは、可愛らしくって大好きだ。
「釣〜ろうよ、釣〜ろうよ〜」という、太郎冠者の調子のよい掛け声に
観客も声を合わせてみたりして、楽しかった。

<佐渡狐>
--------------------------------------------
佐渡の国のお百姓と、越後の国のお百姓が街道で出会い、
いずれも都に年貢を納めに上がるところと知って、仲良く同道する。
互いにお国自慢をするうちに、佐渡に狐がいる、いない、で言い争いになる。
互いにゆずらぬまま都に着くが、納まらない二人は、奏者(取次の役人)
の判定を仰ぐことにして…
--------------------------------------------
佐渡のお百姓: 茂山千五郎
越後のお百姓: 茂山千三郎
奏者: 茂山千作

隣の者だと名乗って、見覚えがないと返す冒頭から、
おおどかで楽しい。なるほど佐渡と越後は大きく見れば向かい隣ですね。
それぞれのお国自慢、負けず嫌いや気後れ、役人に袖の下を渡してでも
勝とうとする姑息さなど、とても分かりやすくて大いに笑った。
狂言の風刺は、現代でもそのまま通じるものだなあ。
奏者役の千作さんは、今年90歳を迎えられるとは思えないほど、
声も大きく張りがあってお元気。

<釣針>
--------------------------------------------
ともに独身の主人と太郎冠者が連れ立って西宮の戎に参篭すると、
夢のお告げがあって釣針を賜り、それで妻を釣ることになる。
太郎冠者は「釣ろうよ、釣ろうよ」と、節面白く声をかけながら
釣針を投げ、まず主人の奥方、次に腰元たち、さらに太郎冠者の妻と、
次々に女たちを釣り出すが…
--------------------------------------------
太郎冠者: 野村萬斎
主: 野村万作

「釣女」として歌舞伎舞踊にもうつされているのは
知っていたけれど、見るのは初めて。
万作さんの主、萬斎さんの太郎冠者という顔合わせは、
初めてかもしれないというくらい珍しいらしい。

妻を釣針で釣らせるという奇抜なお告げは、さすが釣りの神様・戎さま。
ファンタジックな設定ながら、見目のよいのを釣ろうという
太郎冠者たちの切実さはとってもリアル。
「釣〜ろうよ〜、釣〜ろうよ〜」と繰り返される太郎冠者のかけ声とともに、
ぞろぞろと釣れてくる奥方、腰元たち、太郎冠者の妻たちは、
皆被衣をかぶっておもてを見せないところが、ちょっとこわい。
腰をかがめたままのこごみ歩きの者たちが、次から次へと出現すると、
ぽこぽこ増殖して動き回る「茸(くさびら)」の不条理世界を連想してしまった。

顔をのぞきこんで、ええっ!!となる、太郎冠者の大げさなリアクション、
端正な萬斎さんなのでギャップがすごいというか、なんともおかしい。
おかめの面をあらわす妻は、いっそ愛らしく見えるけれど、
やっぱり普通の人間ではないような感じで、
逃げてゆく太郎冠者の気持ちも分かる。
女達の被衣は色とりどりで、目にも華やかだった。
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