『
ある過去の行方』
いったい主役は誰なのだ?
『別離』でアカデミー賞外国語部門受賞したアスガー・ファルハディ監督の新作はまたも離婚の危機にある夫婦と、それぞれに抱えた秘密で魅せる。
空港に降り立ったアーマドと待ち受けるマリー=アンヌ。二人の間はガラスという目に見えない壁でさえぎられている。
どこまでも暗喩的表現が支配して、前作との共通項目を多く感じ、いかにもファルハディ作品だと思わせながら途中で舵を切る。この二人もコマの一つに過ぎない。
マリー=アンヌには新しい恋人がいて、互いに子連れの再婚を願っている。
だが、相手には植物状態になっている妻の存在があり、やがてここのモヤモヤがボディブローのように効いてくる。
パリを舞台にイラン人社会の悩みや異国での孤独感などが背景に流れている気がする。
登場人物全員が幸せになりたくて行動しているのに、些細なボタンの掛け違いから崩壊していくさまが、
逆再生のように<ある過去>にたどり着く。
先入観を持たせながら、そこを崩してゆく脚本の意外性は上手いともいえるが、同時に秘密を後出しじゃんけん的に小出しにしてるズルい印象も…。
子役を含めキャストは手堅いが、ヒステリックなマリー=アンヌの姿を見ると「そんなことでは幸せが逃げて行くよ」と言いたくもなる。共感しづらい点が邪魔をしているのか、どうにも入り込めない。
確かに我々の人生は<過去>の上に成り立つものだし、そこをなし崩しにして未来は築けない。
幸せになりそこなった人たちは、過去ときちんと向き合わなかったことのしっぺ返しというか制裁を受けさせられたということなのだろうか。
正直な話、今回は幾分理が勝ちすぎている気も…。

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