『
風立ちぬ』
<
自分の夢に忠実にまっすぐ進んだ人物を描きたい>と語る宮崎駿監督。
それこそこの作品が彼の忠実な夢で他なるまい。
やりたいことをやりきったな…それが正直なファーストインプレッション。
『風立ちぬ』の原作者堀辰雄とゼロ戦設計士の堀越二郎という実在の人物をないまぜにした云々…なんて論じるのは無粋であろう。
そもそも彼の作品で原作通りに作られたものなんてあっただろうか?
震災、貧困、不況…そういった現在の日本の姿とも重なる部分を垣間見せながら、己の欲望を突き抜けたという演出は大いに納得している。
泣くことはなかったが、どこか清々しい気持ちになった。
だが、いくら詭弁を弄しても主人公に<庵野秀明>を使ったのはマイナスだと思う。
演技力以前にとても青年には感じられない。
(『となりのトトロ』の糸井重里については、少なくとも年齢はあっていた)
主人公が監督自身の投影であるから照れ隠しもあっての採用なのかもしれないが、いささか残念な決断に思える。
得てしてやりたいことをやるというのはいいこともあるが、客観性が失われ未整理な部分が出ることもある。
イタリアの設計士のくだりが乖離している印象もあるが、どうだろう?
もう少し抑える演出もあったのではないか。
本心ではゼロ戦を<もっとカッコよく飛ばせるシーン>を描きたかったのではないかと邪推するが、物が兵器だけに「あまりカッコよく描いては…」と、おそらくそこだけは葛藤があったのではないか。
遠慮を感じたのはそこくらい。
ファミリー向けとは思わないが、
宮崎駿というアニメ作家に関心がある人は心してみるべき作品ではないかと感じた。
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