『
別離』
声も出ないほど喉が干上がる…。いったい何と表現すればいいのか。
テヘランに住むシミンとナデルという夫婦は意見の対立から離婚しようとしている。
かたや子ども(一人娘)の将来ために国を出たいと、もう片方は老いた病気の親のために国に残りたいと…。
すでにわかるように<子ども>は未来の象徴。当然<老いた親>は過去のそれ。
どちらを大切にするべきかという単純な比較は出来ない。
映画にはもう一組の夫婦が登場する。
同じく娘を持ち、敬虔なイスラム教徒で、失業中の夫を金銭的に助けるため遠路はるばるヘルパーの仕事に来るラジエー。
それぞれが小さな秘密を抱えて生きる。
突発的ともいえる事件の伏線は見事なまでに用意周到に張り巡らされていた。
加害者か被害者か、事件の焦点となるポイントをめぐって意見が分かれる。
じらされながら抜け落ちたピースがピタリとはまった時、膝から崩れ落ちそうになった。
脚本も兼ねるアスガー・ファルハディ監督はイランにおける<介護、貧困、宗教>といった様々な問題を、力強くスリリングなタッチで切り取る。
前作の『彼女が消えた浜辺』より一段と熟練度が増した気がする。
対象の内面を抉り出すように映し出すハンディカメラも効果的。
誰もがよりよく生きようと努力しただけなのに、大切なものを守りたかっただけなのに…。
誰が悪いと責め立てることは出来ない現実の重さだけが後を引く。
ベルリン、ゴールデングローブ、アカデミー賞と次々ひれ伏したのは納得の出来。
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