『
光』
邦画界を代表する河瀬直美監督による力作。
今や世界の映画祭常連ともいえる河瀬監督だが、先ごろの『あん』よりもグッと自身のフィールドに近づけてきた印象を受ける。
弱視になって職業カメラマンができなくなった男という設定はありがちな気がするが、
視覚障害者向けのガイド音声作りの裏舞台を描くのは目の付け所が面白いと思った。
目が見えることが当たり前の人にとって、音声ガイドの巧拙なんてピンとこないかもしれないが、なるほどこうして描かれると奥の深いものだと思い知る。
面白いと言っては弊害があるかもしれないが、
視覚障害者も「映画を見る」と表現している事は目からウロコだった。
タイトルの通り至る所に光の演出が見られる。
作品そのものが光をめぐる物語であると同時に象徴としても使われる。
誰もが大切な何かを喪失していて、それを埋めるために手探りしてもがいている様子は河瀬監督らしい印象を受ける。
大胆なトリミング(これを大胆と取るかあざといと取るかで違ってくるかも。それは作品全体についても言えることだが…)もまた然り。
前作『あん』に引き続き出演の永瀬正敏も熱演しているが、特筆すべきは最後に登場するナレーターだろう。
このナレーターなら最初のガイド文章でも説得力が違ったのではないのではと思わせるほどの凄まじさ。ただただ打ちのめされる。
音声ガイド作成の美佐子が「どこまで説明するべきか」という壁にぶち当たるのは、そのまま映画監督の哲学でもあろうし、受け手の我々の問題でもあろうか。
モニターの視覚障害者の真摯な姿に「目が見える自分はキチンと映画を見ていた」のだろうかと自問自答したくなる。
演出の型が見えて気になった箇所もあるが、河瀬監督の円熟期を感じた。
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