第12回ラテンビート映画祭

『パーカー』(短編ドキュメンタリー)
メキシコシティで食肉処理に携わる“ひとりの男”の独白。
屠殺を扱った映画は他にもあるが、事業や会社じゃなく個人にスポットを当てているのが特徴か。
25年も携わる彼の内面が<牛の目つき、血だまり、巻き上げる歯車、狭い通路、柵から見える牛の足元>などなど食肉処理工程のショットの積み重ねによって語られる。
実に淡々とした描写ながら訴求力は高い。
おそらく殺される牛からみたら、男は死神のように見えるのだろう。
それがパーカーのフードのイメージと重なる。
けっして感情が高ぶることなく日々のルーティンをこなす様子がボディーブローのようにジワジワ来る。

『パウリナ』
「試されている」と感じた。
世の中に必要なのはルールの徹底か、教育か?
主人公は判事という出世の道を捨て、また父と反目してまで、庶民のために教師の道を選ぶパウリーナ。
だが、現実は皮肉にもそんな彼女が被害者となることになる。
恩をあだで返される仕打ちに合うパウリーナ。
犯人を裁くのか再教育するのかという試練が与えられる。
選択肢は自分にある。あくまでも理想論を説くのか、現実的なルール厳守に方向転換するのか…。
厳格な判事で、現実主義者の父親との対立が事件と重なる。
ある意味、現代版<北風と太陽>なのだろう。
さすが親子というべきか、似た者同士で信念の強さは親譲り。
娘の顔つきにこそ未来に希望をもらえるようである。
60年代に製作された映画のリメイクだという。
時間軸をずらしながら見せるテクニックに技ありといったところか。
まるで判事が過去の事例から証拠を採取するかのように、観客に突きつける。
カンヌ国際映画祭批評家週間でグランプリ受賞。

『ザ・クラブ』
怖ろしい話。
最近、神父だったか牧師だったかでゲイをカミングアウトして解任されたケースがあったと記憶しているが、カトリックでは同性愛は今もってタブー視される。
犯罪を犯したために職を追われ、世の中とかかわりを持たないように隔離された聖職者たちの棲家<神の家>での出来事。
そこには4人の男性と1人の女性が暮らしていたが、ある日、5人目が送られてきて事件が起きる。
あってはならない事故を隠ぺいしようとする聖職者たち。
さらに事件の調査と<神の家>を廃止するために厳格な聖職者が送り込まれる。
しかし、そこで取った行動とは
<キリスト教>を守るために犯罪を犯すという矛盾。
宗教や大きな権力に潜むタブーと闇を暴き立てる社会派作品。
当初の事件の問題点は<ゲイ>であったことに由来するが、事後処理の罪とそれはどちらが重いのかという問いは痛烈かもしれない。
水平が傾いたアングルはこの世界の傾きを表しているのだろうか。
犬好きには少しヘビーな場面も描かれるが、社会派映画が好きな人は必見。
一般公開されないかな〜。
ベルリン国際映画祭で審査員グランプリ受賞。
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