『
フォックスキャッチャー』
金メダルと書くが、金は『カネ』じゃない。
オリンピックを目指すアマチュアレスリング界の実際に起きた事件を基に映画化。
レスリング選手のスポンサーとなった大富豪ジョン・デュポンの孤独の闇を映し出す。
いかに名家に生まれ育って経済的には何不自由なくとも<お金>では手に入れられないものがある。
しかし悲しいかな、他人の心が分からない男にはアプローチの手段がわからない。
実世界でも多少の差こそあれ、友達を持てない同類は目にすることもあると思う。
冒頭に実際のキツネ狩りの映像が流れる。
これがウマく作品とシンクロする。
キツネを追う人間、人を乗せた馬、実際にキツネを捕える猟犬、…そして獲物のキツネ。
それぞれがこの映画で何に見立ててあるのか…、それらを念頭に置いてみると頷ける点がある。
この着眼点やまとめ方は脚本家の力によるところが大きいのだろう。
監督ベネット・ミラーは『マネーボール』でもスポーツチームの裏方を描いていたが、あちらが<陽>ならこちらは<陰>か。
事件の内容を知っていれば当然かと思うが、重苦しい空気が包み込む。
母親の影響下に飼いならされているジョン・デュポンの空虚さは兄を敬愛する弟マーク・シュルツにも通じる。それゆえ惹かれあったのかもしれない。
メイクの力もあるが、感情が死んでしまったような
大富豪ジョン・デュポンを演じたコメディ俳優スティーヴ・カレルが出色。俄かには信じがたいほどの別人ぶり。
だが、彼が感情を殺してしまった原因はあるはず。
その源流をたどる上で母親との関係は重要なファクターとなっていると思うのだが、そこの追及が甘い印象がする。言い換えると母親の<押し出し>、<説得力>の弱さを感じる。
最後の行動の謎は母との関係と<初めての友人>で理解できるのではないか。
そう思うと何とも哀れな結末。
レスラー、シュルツ兄弟を演じる二人(チャニング・テイタム、マーク・ラファロ)の鍛えられた体格も良くマッチしているし、相当訓練を積んだであろう痕跡は感じられる。
しかし、“フォックスキャッチャー”チームという名は偶然とはいえ驚くべきネーミング。
力作だとは思うが、オスカーで受賞するかと問われたら
メイクアップ&ヘアスタイル賞くらいかな?…が率直な印象。

追伸、個人的には母親がミスキャストに思える。
登場した時点でもっと威圧的な何かを感じさせる風格みたいなものが欲しかった。
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