『
リヴァイアサン』
タイトルは大切だと痛切に感じられた作品。
もし、これが単純に「漁船の操業日誌」とかだったら、まるで違うものになったであろう。(笑)
昔、水中モンスターをスクリーンに映し出した同名SF映画があったけど、これにはそういう恐竜もどきの姿は映らない。
元々リヴァイアサンとは旧約聖書に登場する海の怪物レヴィアタンのこと。
文豪ハーマン・メルヴィル『白鯨』のインスパイア元として知られるニューベッドフォードから漁船で繰り出した漁師たちの作業を映し出したドキュメンタリーで、寡黙に淡々とこなす仕事が描かれる。
仰々しいタイトルとともにGoProによるカメラワークが特徴的。
船上のみならず、水中や空中にものびるカメラの視点。広角レンズを多用して接触しそうなカットで見るものに圧迫感を与える。
水平も垂直もなくなり、天も地もカオスとなる世界。
諧調表現に乏しく押しつぶされた黒色はあたかも覗きこんだ深淵の暗さにも思え、捌いた魚のおこぼれにあずかろうと寄ってくるカモメの集団が漆黒の闇に浮かぶ様は異様さを感じさせる。
軋む機械音や波しぶきの音など、聞こえてくるのはどれもが現実音ばかり。
水中から息つぎするように海上に視線をあげるショットにはゾクゾクした。
いずれも今のテクノロジーがなければ撮れなかった素材ではなかろうか。
具体的なモンスターは映し出されなくとも、全体から浮かび上がる“世界の厳しさ”は感じる。
それこそが描き出したかったことなのであろう。
しかし、映画に娯楽や説明的なモノを求める向きにはただただ退屈な87分になりかねない。
(実際、斜め前方の客は途中から諦めたのか、スマホを取り出していじり始めていた。)
個人的に気になったのは、
このタイトルに「いつ決定したのか」である。
タイトルありきの撮影だったのか、あとで思いついたのか…。
それによって意味が変わってきそうな気もする。
最後に余談を一つ。
2010年、南米ペルーで1300万年前に生息していたとみられる新種のマッコウクジラの仲間が発見され、レヴィアタンにちなんで「リヴィアタン・メルビレイ」という学名が付けられたとのこと。
(もちろん、メルビレイは『白鯨』の作者メルヴィルから来ている。)
なんだか面白い。
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