『
小さいおうち』
タキおばあちゃんの自叙伝を通して語られる、かつての東京にあった小さな赤い屋根の一家に潜む小さな秘密。
中島京子の直木賞受賞の同原作の映画化。
家族の絆を描いてきた山田洋次監督らしいチョイス。
いまや消え去った<たたずまい><古きよき家庭>を感じさせる。
舞台となった昭和初期とは関東大震災の記憶が鮮明なころで、大戦前の右傾化した時代で、オリンピック立候補に庶民は思いを馳せる時代…。
なんだか遠い昔の話じゃないみたいだ。
原作執筆が2008年からというので震災は偶然だろうが、それにしても恐ろしいほどのリンクを感じさせる。もっとも原作は未読なので、映画化に際してアレンジされた箇所かもしれないが、それにしても得てして成功作というのはこういう<運の引きの強さ>みたいなものもあるのだろう。
山田監督は
古くてモダンな小さな家におきる<小さな嵐>を戦争という大きな嵐の時代の中で描いてみせる。
恋愛に制限のあった時代でも人の心は変わらない。
地方から奉公に出てきたタキにとって、少し年上でも主従の関係以上の時子なればその尽きない悩み…、<悩みに悩んで出した答え>を抱えて生き続けたことの想いはいかばかりであったか。
映画に仕込まれた<秘密>と冒頭の奉公先での主から受ける教訓が後の伏線となる脚本の妙!
ほとんどは固定カメラで撮影されている中で、(おそらく)一箇所だけ使われたハンディカメラの演出にしてやられ、息が止まりそうだった。
布宮タキの青年期を黒木華が好演。純朴でまっすぐに、そして控えめながら芯の強さを持ち合わせた女性像を見せ付ける。
あからさまに戦争を扱っていない分だけ、余計に想像力が書き立てられて強く印象に残る。
奉公先のプチブル平井家の時子を演じた松たか子が歌舞伎界の家庭に育ったことも着こなしや所作に表れていた気がする。
ジブリでおなじみの久石譲のスコアもノスタルジックさを添える。
やや年配の方ならば、いたるところに見られる懐かしい匂いに郷愁を覚えるかもしれない。
人間がよく描けていて、昨年末大ヒットした戦争を扱った某映画よりもずっとずっと<命の大切さ>を感じた。
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