『
共喰い』
生臭い作品。
それは血であり、精液であり、または暴力のそれであり、さらに主人公の母親の営む魚屋の生臭さも加わって思わず鼻と口元を押さえたくなる。
原作はいわずと知れた
田中慎弥の芥川賞受賞作。
独特の<言い回し>の記者会見も記憶に新しいところ。
舞台が昭和末期ということもあってか、伝統的な文学の香りを漂わせる。
女を抱く際に殴らずに入られない粗暴で自分勝手な父と、その血が流れていることから逃れられないジレンマに苛立つ息子、そして彼らを取り巻く女性たち…。
対立軸や人物相互関係に分かりやすい線引きがなされる。
父と子という対立を見せながら、その実どちらも自らを尊大に見せかけるちっぽけな男性像が浮かんでいる印象。
男性(オスというべき?)の情けない…だが核心の部分を拡大してみせ、女性の力強さに打ちひしがれる。
息子の恋人である千種を演じた木下美咲に父親の愛人・琴子役の篠原友希子、この二人も印象深いが、
母・仁子を演じた田中裕子の圧倒するまでの存在感から目が離せない。
汚い物に蓋をして匂いを封じ込め、草食系が持てはやされる昨今だからこそ、この生臭さからより強い<人間臭>を感じるのだろうか。
生理的に苦手な人も出そうな作品であるが、大胆な性描写も含めよくぞ作ったと拍手したくなる。
原作から離れたという映画制作サイドからの
カウンターパンチにニヤリ。
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