前回、「次は洋画を…」といったけど、8月15日ということもあり、8月は邦画の戦争モノ特集が多い。
…ということで(どういうこと?)笑

『ONODA 一万夜を超えて』
フランス・日・独・ベルギー・伊合作映画。
制作国に日本もあるが、メインはフランスのようだ。(だから洋画扱い?)
監督は仏人アルチュール・アラリ。
かなり長尺(約3時間)の映画だが、退屈はしなかった。
ある程度の年代なら旧日本軍兵士・小野田寛郎の事を覚えているだろう。
なぜ彼が最後まで独自で隠れていられたのか。
その背景となる経緯が詳らかに描かれる。
欧米人目線では不可思議に映るであろう旧日本兵の生き方に迫る。
ほぼ日本人俳優だけなのに、スタッフがフランス人たちに変わるだけでこうも変わるかという見本のような出来栄え。
比較的淡々と進むのだが、そこが逆に真実味を感じられる。

『ラーゲリより愛を込めて』
良くも悪くも日本のメジャー会社が作りそうな戦争題材映画。
第2次世界大戦終結後、ソ連軍の捕虜として不当にシベリアの収容所に抑留された日本人・山本幡男氏の姿を描く。
監督は瀬々敬久。
収容所でのサバイバルがメインの映画。
俳優らの熱演が目を引くが、トゥーマッチと感じる向きもある。
これも想定内の邦画テンション。(演出目的かもしれないが、自然に抑えた方向には行かないのか)
最後のダメ押しまで含めて”邦画のメジャー”を感じた。
もう一本邦画。

『桜色の風が咲く』
東京大学先端科学技術研究センターでバリアフリー分野教授を務める福島智の半生記を描く。
9歳で失明、18歳で聴覚を失いながらも独自のコミュニケーション方法で道を切り開く感動作。
こんな人が実在しているというだけで驚きなのだが、ずっと支え続ける献身的な母親の存在も光る。
自分が彼の状況だったら…などと想像すら及ばない。
素材が飛び切りで再現ドラマとしては平凡ではあるが、知れてよかった。
劇中でつぶやく「男版ヘレン・ケラーになりそうや」は涙なしでは聞けない名セリフとなっている。
強いて欠点といえば、こんなの見たら弱音を吐けないじゃないか。(苦笑)

『PIG/ピッグ』
トリュフハンターの男が盗まれた豚を探す旅から自身の過去と向き合い、喪失から一歩進みだす物語。
借金を返し終わったというニコラス・ケイジにとっては、(お金のための)雑なアクション映画(と言っては失礼か)から、演技派の面目躍如となった本作。
分かりやすい復讐劇を描きながらも人間味ある深さをのぞかせるのだから、もっとこの路線で活躍して欲しい。
監督は、本作が脚本・監督デビューとなったマイケル・サルノスキ。
早くも『クワイエット・プレイス』の3作目のメガホンをとることが決まっているのも頷ける出来栄え。

『ミセス・ハリス、パリへ行く』
1950年代のロンドン。戦争で夫を亡くした家政婦のミセス・ハリスがパリでクリスチャン・ディオールの洋服を買いに行くお話。
ミセス・ハリスのキャラクターもあってほのぼのとした柔らかさを感じる。
当時のハイブランドの内情はファッション好きにはたまらないだろう。
概ね予定調和と言える大人のお伽噺に思えるが、好意的に受け止められる。
どこを切ってもオシャレな洋服の数々。
本店支配人をイザベル・ユペールが演じるが、もし彼女がミセス・ハリスだったら全く違う印象になるだろう。(というか話が成立しないか)
レスリー・マンヴィルがハリスを演じるからこそ出る味わいに心が温まる。
ところで、これ最初吹き替えで見ていて、ちょっと引っかかった個所があったので、字幕でそこを比べてみた。
ディオールでミセス・ハリスが採寸されるシーンなのだが、「モデル体型だ」というセリフの返しで彼女が「モデルはモデルでも鉄道模型(レイル・モデル)でしょ」と言うのだ。
字幕版は原語に近いのだが、吹き替えでは「モデルガンのモデルでしょ?ガンは頑丈のガン」と笑いながら返す。
これはちょっと腑に落ちない。
いち家政婦がガンマニアとは思えないし、当時のロンドンでモデルガンは存在していたのかと考えると不自然な印象を覚える。
鉄道模型の元祖はイギリスで19世紀初頭からあったという。
使えていたお屋敷の旦那様の趣味に鉄道模型があっても不思議はない。
そもそも「モデルガン」は和製英語で、英語圏ではToy GunもしくはCap Gunと呼ばれていて子供向けの玩具である。
“いわゆる”本物の銃とそっくりの外見をしたモデルガンが発売されるのは、本物を所持できない日本で、それも1960年頃になって販売され始めるのだそう。
映画の時代のロンドンに存在していたら完全にオーパーツでしょ?(笑)
翻訳者を悪く言いたくはないけど(こういう偏屈な客もいるので)少し気を付けて欲しい。
ログインしてコメントを確認・投稿する