都心のシネコンがストップしているために唯一『ファーザー』を上映しているのが渋谷のル・シネマ。
座席数を半分に減らしサービスデーということもあり、終始満席状態。
都内のあちこちから駆けつけてきているわけだ。
これで感染抑止になっているのか?
それよりもシネコンも開いた方が客は分散すると思うのだが。
シネコンはワンスクリーンにたいして一日(!)2万円の協力金(補償)だそうで、大人1900円のこのご時世では11人で超えてしまう。(絶句)
野球場が50%までの動員を許可されているのとバランスが取れない気がするが、百歩…いや百万歩譲ったとして、在京の球場に県境を超えて応援に来ている人もいるのじゃないか。
東京の球場には都内の人だけにしてください。(そういうお願いだよね?)
『
ファーザー』
人の寿命が延びた現代、避けて通れない認知症問題。
誰しもがその“主人公”になりえる。
これまでも多くの作品で取り扱われた題材だが、珍しいのは認知症になった当人の視点で語られること。
認知症になった父が常に気にするのは自分の腕時計。
これ自体が記憶や時間が混乱する作品の比喩表現となっている。
加えて愛聴するクラシック音楽のCD。これの音飛びが意味するところもまた然り。
元々舞台劇だったというのがよくわかる。
少ない登場人物に実力俳優でがっちり固めて隙のない作り。
アンソニー・ホプキンス、オリヴィア・コールマンとオスカー俳優の共演が話題ではあるが、特にオスカー受賞のホプキンスの演技には完膚なきまでに打ちのめされる。
余談ながらアンソニー・ホプキンスの役名が「アンソニー」で誕生日設定が実際に本人のものだという。余計に混濁する。
メガホンを取るのはフランス出身のフロリアン・ゼレール。初監督となる本作は数多く受賞した自身の戯曲の映画化。
やはり作品の本質が分かっている人が指揮を執るのは納得できる。
ほとんどが室内劇であるが、殻の内部と外部との対比の巧みさ、小道具の使い方などに
映像的面白味を感じた。
非常に重い題材ながらミステリー要素もあるのでエンタメ的にも堪能できる。
劇中で目に付く顔のオブジェはポーランド出身美術家のイゴール・ミトライ作の"LUCI DI NARA" 。
ミトライの作風は彫刻の一部を大胆に切り取って、実際の古典彫刻がこうむっている損傷を強調するスタイルらしい。
高齢で認知症の父アンソニーを重ね合わせてみているのだろうか。
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