『
迫り来る嵐』
第30回東京国際映画祭で芸術賞、男優賞受賞となったドン・ユエ監督の長編デビュー作。
韓流のサスペンスを思い出すような骨太なノワールタッチ。
舞台は1997年の中国。小さな製鋼所近辺で起きた若い女性を狙った連続猟奇事件の謎を追う。
刑事の世界に背伸びする製鋼所の警備員が犯人追跡に執心してズブズブ深みにハマっていく。
全編にわたってモノクロかと思うほど色彩を抑えたダークな画作り。
くわえて雨や泥にまみれるシーンが多く、誰が何をやっているのか判別しにくい。
そのじれったさが演出の巧みさを感じる。
事件に取りつかれ視野が狭くなっている男と、未来に夢を抱いて待つ女。
二人の関係性はありがちだが物語に奥行きを与える。
舞台背景に香港返還という歴史が重なり、当時の不安な社会情勢が反映されているかのようだ。
『殺人の追憶』やフィンチャーの『セブン』などが好きな観客には訴えるものがあるだろう。
ミステリーとして見ると好みは分かれるかもしれないが、黒澤明を思わせる力強い画作りが何より魅力で、少々の瑕を隠している。
ともかく将来が期待される新人監督の誕生を祝いたい。
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