『
彼が愛したケーキ職人』
ともすればベタな三角関係のメロドラマになりそうな題材だが、宗教・国家・性指向といった今の社会で取り上げられる問題をまぶしてあるのが肝。
壁を持たずに風通し良く自由に生きることの大切さと難しさは日ごろ感じる人も多いだろう。
ちょっと難しいそれらを誰もが理解できる美味しいフードで表現しているのは中々上手い。
見た目で敬遠しないで、食べて味わえばその価値はおのずと理解できる。
ベルリンのカフェでケーキ職人として働くトーマスが出張の度に立ち寄った一人のイスラエル男性と恋に落ちる。妻子ある男性との逢瀬によからぬ不安がよぎる。
しかし、トーマスを待ち受けた試練は別のものだった。
彼の面影を追いかけてエルサレムまで出かけるトーマスの行動力は目を見張るものがある反面、どうするつもりだったのかと言った所に疑問も感じなくはないが、秘密が明かされてゆく過程のスリリングさは楽しめた。
愛した人の衣類を身に着けるなどといった小道具を巧みに使った演出がにくい。
同じく愛する人を失くしたとはいえ、トーマスと妻の二人の喪失感は同じではないはずなのに共感を持ち得るのだろうか。その意味では赦しの映画でもあるか。
共に壁を築いていた(いる)ベルリンとイスラエルが舞台なのは必然だったろう。
しかし、ユダヤ教の戒律の厳しさは初めて気づかされるものもあった。
食わず嫌いにならない人生を歩みたいもの。
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