『
プーと大人になった僕』
これは是非とも『グッバイ・クリストファー・ロビン』と合わせて鑑賞したい。
同じ人物を同じ時期に英米で映画化されたのも興味深いが、時系列ではこちらが先なので、まずは…。
「クマのプーさん」で知られる作家A・A・ミルンと、彼の息子クリストファー・ロビン。
その隠された人生や「クマのプーさん」誕生の秘話が解き明かされる。
今でこそ戦争で引き起こされるPTSDは知られているが、ミルンが従軍した第1次世界大戦期にはまだ認知されていない。
戦争を忘れるためにも静かな田舎暮らしを選んだミルン一家だが、息子との遊びを通して綴られた「クマのプーさん」は疲弊した世界中の人々だけでなく、自分自身の心の傷をも癒す効果を得る。
家庭において乳母のはたした役割の大きさに気づかされる。
ともすれば愛情の薄い母親に映りかねないが、得てしてそんなものだったのかも。
実際の舞台となったサセックスの自然が美しい。
A・A・ミルンを演じたドーナル・グリーソンの繊細な芝居が胸に迫る。
この映画を見た後では、きっと「クマのプーさん」は違って見えるはず。
一方の『プーと大人になった僕』は、成長したクリストファー・ロビンが主役。
「クマのプーさん」の後日譚ともいえる内容で、石川淳の「アルプスの少女」が頭をよぎったりもした。
ブラック企業に社畜として雇われ疲労困憊しているオッサンのクリストファー・ロビン。
おかげで家庭内にも亀裂が走り、会社員としての立場も危うい…。
いかにもディズニーらしい予定調和の前向きな内容で安心して見られる。
道に迷ったクリストファーを導くのが、かつての“ぬいぐるみ”の動物たち。
その動く“ぬいぐるみ”再現は少し不気味さもあるが、ウマく実写になじませている。
ぬいぐるみと会話するいい年をした大人という役柄にはどこか無邪気さを感じさせるユアン・マクレガーは適任。
当時のロンドンの再現も見ごたえあるが、何より森の美しさはここでも冴える。
『グッバイ・クリストファー・ロビン』、小説(あるいはアニメ)「クマのプーさん」と続けてみると理解は深まると思う。
しかし、帰宅が夜9時で「遅い」と家庭崩壊の危機を迎えるなんて、今の日本人からしたら苦笑いするほかない。
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