『
タクシー運転手 〜約束は海を越えて〜』
1980年に起きた光州事件を題材にしているというが、事件の内容はよく知らなかったので大いに驚いた。
ソン・ガンホの笑顔が映るポスターを見る限り、同じタクシー運転手を描いたスコセッシの『タクシードライバー』とは違うよなぁ…なんて思っていたぐらい。(苦笑)
のどかさからテーストを一変させる後半には背筋が凍る。
(天安門事件を想起させるからか、中国では上映禁止で議論すら許されないという。)
実在のドイツ人記者ユルゲン・ヒンツペーターの体験をもとに作られたドラマ。
口はいい加減だが、仕事に対する意識は高いマンソプ(ソン・ガンホ)が愛娘との生活費のため無謀な仕事を引き受ける。
政治に興味のない小市民代表なのに大きな政治の渦に巻き込まれて行くからこそ共感しやすいし、ソン・ガンホならではの説得力と魅力を感じる。
逆にドイツ人記者の方にもう一つ印象に残る所があれば、なお良かったのだが。
言論統制、政権の暴走、そしてジャーナリズムの意義…この手の作品では見慣れた問題点ではあるが改めて突きつけられる。
人によっては『マッドマックス 怒りのデス・ロード』との共通点をあげる記述も見えるが、それは目的地に行って帰ってくるというアウトラインだけのことではなくクライマックスの派手なアクションにもあるのではないか。(笑)
小市民同士が協力し合って難問突破を試みるあたりは泣けてくる。
おにぎりなどちょっとしたアイテムの伏線も効果的。
チャン・フン監督はキム・ギドクの助監督をしていたと聞くが、師匠よりもエンタメに寄っている気がするのは盛り込まれるユーモアや検問突破のアイディア、クライマックスのアクションにもあるだろう。
重い社会派の題材にあからさまなフィクションの挿入が興ざめという人もいるだろうが娯楽映画として描くのは理解できなくはない。
それでもBGMは少々大仰に感じてしまったが…。
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