『
ありがとう、トニ・エルドマン』
男親が娘に対する心配は息子のそれとは違うだろう。
母国ドイツを離れルーマニアで働く娘を心配するあまり、ストーカーのように付きまとう恰幅のいい父親。
誰が見てもバレバレの父の変装やくだらない小ネタギャグが笑えるか笑えないかで観方が変わるだろうか?
お節介にも程があると思える父娘関係だが、それは仕事で無理してテンパっている娘にささやかな変化を与える。
まずは“トニ・エルドマン”ありきで、彼の個性が際立つ。
しかしそれ以上に見事な配役だと思ったのは娘イネス役のザンドラ・ヒュラー。
不幸を一人で背負い込んだような存在で、とりわけ美人じゃないのも役柄に信憑性を持たせる。
働く環境にドイツとルーマニアの歴史関係もチラリと頭をよぎる。
イネスの会社の企画内容と父親の愛犬が重ね合わされる。
(笑えない)笑いに包んでいるが、汚れ仕事をエルドマンは引き受けているのだ。
子を思う親の気持ちをベタな表現を使わなかったのは好感が持てるし、(どちらかといえば)好みでもある。
162分もある長尺で観る前は大丈夫かと心配だったが、長さの割には長くは感じなかったのだから脚本が良く書けているのだろう。(それでも短いとは言わないが…)
個人的には最後の父の台詞は蛇足かなと感じた。
世の娘さんの意見を聞いてみたいところだ。
すでにハリウッドでジャック・ニコルソンが“トニ・エルドマン”役でリメイクが決まっているというが、むしろ気になるのは娘役の方か。
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