『
わすれな草』
家族介護の苦労は少子高齢化が進む日本でも他人事ではない。
ドイツ人の映画監督ダーヴィット・ジーヴェキンクはアルツハイマーになって記憶を失いゆく母親の姿を映像に収める。
よくありがちな題材ではあるが、大きな違いは両親の過去の話をクローズアップしており、そこに特色があるからではないか。
長年母の面倒を見てきた父親は数学教師で、母親はいわゆる左派のインテリだった。
人の問題は数学のように割り切れない。数学がいかに得意でもスパッとはじき出される“正解”は出ないのだ。
若かりし頃に自由を求めて戦っていた母親が、別の意味で現世からしがらみを解き放たれていくのは何とも皮肉な感じもする。
昨今、時間軸を乗り越えて過去をやり直すとか人生をリセットするとか、その手の作品が多いように感じる。
それは誰しも変えたい過去や避けたい未来はあるかもしれないが、ゲーム感覚で回避できる人生なんて存在しない。
やり直したい過去も老いという変えることができない未来も受け止めることを含めて人生なのではないか。
過去の映像にはドイツの直近の歴史も垣間見えて興味深いドキュメンタリーとなっている。
地味な作品ではあるが、家族だけで介護を続けることの困難や、献身的な父親の姿に心打たれる。
しかし、(鑑賞したのは)平日の昼間とはいえ、封切り直後なのにお客さんがあまり入ってなくてビックリ。
(映画の興行面でも介護という意味でも)日本の今後が心配になるなぁ。
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