『
午後8時の訪問者』
時間外に診療所を訪れた人に対応しなかったばかりに、一人の命が失われる。
もちろん医者を責めることはできないのだが、人の命を救う仕事というのが何よりも痛切。
自責の念にさいなまれる医師が亡くなった女性の謎を追うミステリー仕立てにしながら、現代社会が抱える移民問題を問う。
事件の発端となる診療所に限らず、自動車のドアや個人の部屋のドアなどこれはまさにドアの映画。
ドアを辞書で調べると建物や乗り物の内部と外部を隔てるもの…という表記が見つかる。
外部から守るための物でもあり、隔絶するもの。わけ隔てられた二つの世界の意図は明らか。
長く無名の俳優を使ってきたダルデンヌ兄弟だが、前回『サンドラの週末』のマリオン・コティヤール同様に今回も有名女優(アデル・エネル)を中心に据えてきた。
興行面でのリスク回避という点もあるかもしれないが、それよりも観客が身近に感情移入しやすいという利点もあるか。
前作同様にヒロインがひたすら目的を果たすために歩き回る姿が印象的。
これは我々に行動力を求めている示唆だろうか。
監督自身も話しているように、これは昨今の移民に対する寓話のようなもの。
殺された黒人女性はよそ者。
彼女が困っていても誰もが見てみぬふり、扉を閉ざすものも珍しくない。
直面する問題に頬かむりして逃げ回る姿を笑い飛ばすことは出来ない。
教訓色が強いが、一つ一つの暗喩も的確に感じられる良作。
問題を投げかけられた我々がそれぞれのドアをどうするのかが試されている。
どうでもいい小ネタですが、診療所のプリンターがうちのと同タイプに見えた。(笑)
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