『
人類遺産』
もしも地球上に人間がいなかったら…、もしも人間という生き物の性質が違っていたら…。近未来ディストピアを得意とするSF作家でなくとも、そう考えるのは珍しくないようだ。
『いのちの食べかた』で動物の命を粗末にする飽食の時代へ警鐘を鳴らしたニコラウス・ゲイハルター監督が4年の年月をかけて、世界70か所の廃墟を取材した異色のドキュメンタリー。
“人間”のことを描くのに人間を登場させない手法はユニークである。
固定カメラを据え、構図がピタリと決まった撮影と人工的な音声を一切排除して、あたかもスライドショーのような映像の連続。
場所の特定は表示されなくとも日本と分かる映像も多々ある。
劇場・遊園地・団地・病院・レストランなどそこにはかつて人間の営みが存在した。
人が作り上げたものは、人の存在がなくなるとこうも空しく感じるものか。
人工的な音はない代わりに、鳥や虫・風や雷といった自然の音が鳴り響く。
おそらくは意図的につけられた箇所もあるのではないだろうか。
監督がそこに込めた意図は確かに感じる。
廃墟であるにもかかわらず、表現しがたい美しさを感じさせる映像には得難いものがある。
もちろんそれぞれのカットから一歩外に出れば人間の存在はあるのだろうが、切り取られた廃墟の映像からは人類絶滅後の近未来を匂わせる。
原題のHomo Sapiensを『人類遺産』とはずいぶん大仰な題にしたものだとは思うが、邦題がフィクションで終わるような知恵を出し合うべき時なのだろう。
海外盤DVDですが、セリフもナレーションも何もないので、これで問題なし。
(しかし特典もメイキングも何もないDVDだったなぁ。)
一応の流れはなくはないけど、ストーリー性は弱いので退屈に感じる人も多いだろう。
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