『
歌声にのった少年』
パレスチナ・ガザ地区といえば紛争が絶えずに、生きることもままならない状況だろうということくらいしか知らない。
いつ紛争に巻き込まれて命を落とすかしれない生活にまともな希望などあるはずもない。
それでも明日を信じる子供たちは自分の力でガザという泥沼から抜け出ようと必死に生きる。
これまた実話がベースだそうだ。
『アメリカン・アイドル』の功績は眠れる才能にアメリカンドリームを実現させただけではなく、世界に同様の番組を流行らせたこともある。
これは『アメリカン・アイドル』の中東版『アラブ・アイドル』からスーパースターになったムハンマド・アッサームのお話。
…となれば結論は誰もが知っているわけだが、ガザという土地とイスラムの教えが特別なものにしている。
二幕もので、ムハンマドが天から与えられた美声を生かして、姉の病気を治療してあげたいという思いから歌手で身を立てる計画を立案する少年期と、『アラブ・アイドル』を目指す青年期の話に分かれる。
話の筋自体は珍しいとは思わないが、
紛争で破壊され廃墟と化したガザの町は見るのも忍びない。(本格的にガザでのロケ作品となったという。ここにこだわったのは重要なポイントだったのではないか)
こんな絶望的な環境ではまともに働いてもバカバカしいだけで、裏ビジネスが横行するのも頷ける。
パレスチナといえば、自由に他国に行き来できないことも知られていよう。
また厳格なイスラム教では大衆音楽は禁止されていたはずだが、その大衆音楽でイスラム社会の壁を破ろうというのだから、根底に流れる強い意図を感じる。
加えて言うなら偶像崇拝が禁止されるイスラム世界で偶像(アイドル)となる皮肉も感じた。
(宗教上の偶像崇拝は違う意味かもしれないが…笑)
絶望の中にも希望はあるということを織り込まれた実際の映像が何よりも雄弁に物語る。
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