『
ティエリー・トグルドーの憂鬱』
資本主義社会の負の面が強く描かれた作品。
企業や社会を守るために人間の尊厳が失われてゆく。
不景気が生んだ予期せぬ苦悩か。
突然のリストラで路頭に迷う50代のティエリーは妻と障がいのある子供を抱えているのだから藁にもすがりたい気持ちになるだろう。
『母の身終い』も相当ヘビー級だったが、またも名優ヴァンサン・ランドンとコラボしたステファヌ・プリゼ監督の新作は逃げ場がないほどの硬派な社会派ドラマ。
家族にとっても善き父親であろうと、再就職に奮闘する姿と耐えに耐えて苦虫をつぶしたようなヴァンサン・ランドンの表情が何とも言えない。
長き空白から得た就職先は大型スーパーの監視員。
意に反する業務命令は、家族や他人に正直なティエリーにとっては拷問のような苦しみだったろう。
1時間半程度の上映時間だがスーパーの監視映像が長くて憂鬱になる。
観客も一緒に監視を強制させられている気分になるのだ。
弱者だったティエリーは、同じような弱者を取り締まらなければならない憂鬱。
終盤での同僚のさりげない問いかけは重いものがある。
説明的なセリフを排除して、長回しでヴァンサン・ランドンの表情を追い続けるカメラが秀逸。セリフ以上の内容を全身で語るヴァンサン・ランドンも見事でカンヌやセザールでの主演男優賞受賞も頷ける。
障がいある息子が冒頭で出すクイズの答えに監督の伝えたいメッセージが隠されている気がした。
(しかし、それを受け入れることが難しいのも事実…)
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