『
ストリート・オーケストラ』
リオでオリンピックを開催中のブラジルだが、治安の悪さや貧困層の多さといった問題点が取りざたされている。
この映画の舞台はブラジルで最大の都市サンパウロ。
リオ同様に、ここにもスラムや格差社会と問題は山積み。
そんな底辺から抜け出すにはたぐいまれな才能を認められるか犯罪に手を染めるしかないのか…。
主人公は神童と呼ばれるほどヴァイオリンの才能があったラエルチだが、メンタルの弱さでここぞという時に実力を出し切れない。
オーケストラの仕事をもらえず生活費にも困るありさま。
そんな彼にNGOが支援するスラム街の生徒の音楽教師という転機が訪れる…。
骨格は定番パターンで、教える立場のラエルチが生徒たちから大切なものを教わるというもの。原題(英語題ではない)もそこから来ているのだろう。
絶望的な状況でも希望を失わないようにという前向きなメッセージは普遍だが、演出・脚本にもたつきを感じる。
冒頭のオーディションと対をなすシーンの使い方に一因があるか?
生徒たちの成長とともにラエルチの成長物語であるはずだから彼にとっての優先順位の価値観転換が起きないと収まりが悪いのでは?
利己主義から利他主義への流れが上手くいっていない気がしてならなかった。
本当のスラム街にセットを構えているというだけありリアル感はあるし、主演ラエルチ役に迎えたブラジル映画界の大物俳優ラザロ・ハーモスの強い存在感も光るものがあったので、余計に惜しい気がした。
ラエルチが目を掛けるサムエルがバッハを奏でるのに合わせて友人がブラジリアン・ミュージックに編曲していくシーンが印象に残る。相手に合わせながら自分の色を出していくこのシーンは映画を象徴しているのではないか。価値観の違うものがぶつかり合うのではなく、互いの長所をもって融け合う大切さと知恵が必要なのだろう。
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