『
山河ノスタルジア』
以前、中華料理店で「中国の方にとって日本のおせちに相当するものって何ですか?」と聞いてみたことがある。同じではないけど一番近いのは餃子かもしれないという話だった。もちろん中国は国が広いから地方によっては様々違いがあるのかもしれないが、餃子は中国人にとっては格別な思い入れのある食べ物なんだと感じた記憶が、ふと思い出された。
急速に発展を続ける中国社会に翻弄される一人の女性タオを中心に過去・現在・未来と時間をまたいで描かれるが、映画の背景にあるのはあまりに性急な変化を遂げる中国への警鐘ではないのか。
小学校教師だったタオと幼なじみだが内向的なリャンズーに実業家で自信家のジンシェンとの三角関係から始まり、やがて発展する中国を背景に親子の物語へと突き進む。
もちろん<子供>が<未来>そのものの比喩なのだろう。
1999年から物語は始まるが、マカオや香港返還という転換期から大きく高度経済発展のカーブに差し掛かる時代を取り上げる。
ジャ・ジャンクー監督作品で未来が描かれるのは初めてだという。
それも当初は予定してなかったというのだが、確かにそれは見ていて何となく感じた。
「現在」のシーンで完結してもよさそうな印象を受けたからだ。
「過去から現在」の下りは予想内のメッセージに思えるが、その分未来の考察が興味深い点かも。
舞台もそうだが、家族間のコミュニケーションについて…と言ったらよいか。
そこで、この映画のシンプルで美しいメッセージが明確になる。
国家の経済発展の前に忘れ去られている大きな犠牲に気が付かされるのだ。
これは何も中国に限った話ではなく、豊かな暮らしを求めて都市に流入する日本でも他人事ではないと思う。
劇中にはペット・ショップ・ボーイズの「ゴー・ウエスト」(オリジナルはヴィレッジ・ピープル)が流れるが、単に時代を表現するだけでないのは、曲の成り立ちを紐解けば明らかだろう。
原題は『山河故人』。「山河」は変わることのない景色、「故人」は旧知の友を意味する言葉で日本語の持つ「亡くなった人」という意味はないのだという。
色彩やアスペクト比の活用も興味深い。
ジャ監督作の常連俳優チャオ・タオが(同じタオという役名)26年という長き年月を演じきるのも見どころ。
試写会@映画美学校 試写室
(東急主催の試写会だったが、当選メール以外にも本人確認のための運転免許証などの提示を求められたのは初めてだ。しかし、アンケートに答えたら
ステッドラーの色鉛筆セットまでいただけた。さすが東急!太っ腹ですな。)
4月23日 渋谷 Bunkamura ル・シネマにて公開。
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