『
リリーのすべて』
世界で初めて性別適合手術を受けた人物の映画化…と聞くと、どことなく身構えてしまうが、実に狭い人間関係の話。狭い人間関係が大きな命題を持つ『英国王のスピーチ』のトム・フーパー監督らしいというべきなのか。
昨今、トランスジェンダーを扱った作品は珍しくなくなってきているが、まだそういう概念や認識に乏しかった1920〜30年代の苦労は想像に難くない。
いきなり首根っこ捕まえて狂人扱いも非人間的だが致し方ないのかもしれない。
どのカットも絵画のようにため息が出るほど静謐で美しい。
しかし、うっすらと青みがかったトーンが問題の行く先を意識させる。
夫婦そろって同じ画家という職業だったことが理解し合える助けになったのではないかということと、芸術家であったことが幸いしたのかな…と思った。
他の硬い職業だったら、どうだったろうか?いずれにしろ自分の性に違和感を持ち変更したい主人公よりも受け止める妻の方がよほど厳しい試練ではないのか。
自分に嘘をつかずに向き合う勇気や、愛する人の苦悩を正面から受け止めることは中々できることではない。
やはりこの映画は夫アイナー・ヴェイナーと妻のゲルダを演じた二人の繊細な演技で語られるだろう。
いまや若き名優の名をほしいままにするエディ・レッドメインと、勢いのある新鋭アリシア・ヴィキャンデル。決して抜きんでた美人ではないが、愛嬌があるというのか親しみやすさを感じる。
レッドメインが女性の衣類を初めて身に着けた時のキュッと縮ませる仕草などはよく観察していると思った。
本筋とはあまり関係ないけど、百貨店の売り子のキャスティングは身長かな?それともセッシューか?(笑)
『英国王のスピーチ』でもコンビを組んだアレクサンドル・デスプラのメロウなスコアが優しく包み込む。
モデルの画家は当時40代だったと聞くが、それを(見栄えよく?)若くしているのは性に対して意味合いが少し変わるのではないかな?
この部分を商業的な意味で変更するくらいなら別のまとめ方があっても良かったかなぁ…とも思う。
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