『
パリ3区の遺産相続人』
父から遺産相続したパリの物件を頼りにNYからやって来た一文無しの男マティアスが老婦人マティルドと出会い、亡き父との秘密に触れて人生を変えてゆく。
いかにも舞台っぽいシチュエーションと会話劇だと思ったら、本作で監督も務めるイスラエル・ホロヴィッツ(『いちご白書』の脚本家)の戯曲を基にしているという。
知っての通り、パリの区分けは市の中心部からカタツムリの殻のように螺旋を描くように決められていて、大ざっぱに言えば数字の少ない方が富裕層が多いと聞く。つまりこのアパルトマンはかなり資産価値がありそうだという期待感をマティアスは持っているのだろう。
知らなかったのは、この映画に登場する
“ヴィアジェ”という終身方式の不動産販売のこと。
バクチのような仕組みだが、不慣れなシステムには少し戸惑う。
わだかまりのあった父への思いを抱えたマティアスが異国の地、パリで人生をほじくり返す時に家族の秘密を見つけるあたりの面白さと、シニカルな人生に心温まるピースを配する監督のやさしさを感じる。
何よりも
主要三人を演じたケヴィン・クライン、マギー・スミス、クリスティン・スコット・トーマスの実力派俳優たちの熱演が光る。不器用で自虐的に自己評価するケヴィン・クラインの少しはみ出た面白味やマギー・スミスの年輪を感じさせる存在感は飽きさせる事はない。
街の不動産屋などちょっとした脇役にも個性派俳優ドミニク・ピノン(『デリカテッセン』『アメリ』等)をキャスティングしているのもうれしい限り。
多少気になったのは、込み入った話でその手が好きな人には<読み応えある>かもしれないが、複雑にするための複雑さではないかという点。
結果、必然的に説明が必要になり、純粋さを装飾が邪魔しているきらいも…。
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