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2015年12月17日01:20

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『母と暮せば』

『母と暮せば』

 映画をどの地点から見るかで変わるのかも…。
映画の第一人称(ナレーション)が二宮扮する息子なので(タイトルも息子視点)、彼の視点で見ていたが、むしろ母の視点から見るべきだろうか。

 山田洋次監督の初めてのファンタジー映画だという。
80歳を超えて、残りの映画人生を考えれば<遺言>という意味合いもあるのかもしれない。

 太平洋戦争の庶民の生活を描くが、終戦後がメイン。
生き延びた人々は原爆や戦争は終わったこととして、再出発しなければならないことは承知だろうが、人間の心は簡単に割り切れない。
長崎原爆投下の3年後、原爆で亡くした息子・浩二を忘れられない母・伸子のもとに、その息子が幽霊となって表れる。

 母(吉永小百合)と息子(二宮和也)の会話を中心に進む劇で、このまま舞台でも使えそうな脚本に思える。
さすがの吉永小百合も母親役はそろそろ厳しいかなとは思うが、凛とした佇まいは若い日本人では出せない味だろうか。
二宮和也の必要以上に重くならない存在感が上手くハマる。

 母が息子を亡くしたことについて「津波や地震」というキーワードを使い、切々と訴えるのは右傾化する現代日本社会への警鐘なのだろう。
生きるためには、なりふり構わず闇業にも手を出す<上海のおじさん>(加藤健一)がとてもいい味を出している。
『清く、正しく、貧しく』とお上の言いなりになって配給のみでは生きていけない現実をあざ笑うかのような強かな存在。

 CGを使って描かれた原爆の恐怖の一コマは強いインパクトを残す。
(決まりごとのようにキノコ雲で表現しない点は工夫のあとを感じる。)

 未来は過去の延長線上にあるとはいえ、過去に引きずられたままでは前へ進めない。
浩二に思いを寄せる<母>と<婚約者>の二人の女性のその後の対応に一つの答えを見出す。

 劇中で母と息子が「最近見た映画」について交わす言葉がある。
もちろん時代性を表す意味もあるだろうが、選んだ作品の内容にこの母と息子のスタンスの違いが感じられる。

 カトリック中央協議会の推薦という話だが、ラストでなるほどと思わせる。
この辺は人それぞれで違いがあるだろうし、広島ではなく長崎である必然性なのかな…とも。

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