『
独裁者と小さな孫』
昨年のフィルメックスでは『プレジデント』として上映されたジョージアの映画。
見逃していたが、観客賞を取ったので期待していた。
架空の独裁国家での話。
夜でも煌々と点るイルミネーションが繁栄を示している。
電話一本で、何でもできる強大な権力を持つ大統領だが、ある時クーデターが起きて状況が一変。
欧州で亡命生活を送るモフセン・マフマルバフ監督の映画。
下敷きには様々な事実があるだろうが、とりわけ<アラブの春>を意識しているのだろう。
歴史上の独裁者で、おとぎ話にあるような理想の王国を築けたケースはあるのか?
この映画の独裁国家も大なり小なり過去の置き換えだろう。
旅芸人に扮して、孫と共に国外脱出の旅に出るが、そこで初めて知る驚愕の事実。
目をそむけたくなるシーンも描かれるが、現実はもっと酷かったのではないか。
冒頭のキンキラリンとした景観とは真逆の光景に言葉が出ない。
いくらなんでも大統領がそこまで無知だったというのは眉唾モノでもあるが、その辺も寓話なんだろう。
この映画の肝は独裁者の断罪ではなく、そこから先の話。
止めなければならない<負の連鎖>は誰もが分かっているはずなのだが、そう簡単でないことは歴史が証明してしまっている。
そこにこそ人間の英知を傾けなければならない。
そんな中で一筋の光を感じさせるのは音楽とダンス。
芸術活動に怒りのエネルギーを昇華させようという願いなのか。
孫との逃亡劇にしたのが効果的。
一人旅ではモノローグだらけになるか、説明不足になりかねないところを子供の問いかけで観客への答えと、大統領自身の気づきになるのだから。
絶望とわずかな希望が入りまじるラストはどう受け止めればいいのか…。
そこは各自が持ち帰るべきことなのか。
試写会@アキバシアター
12月 12日 ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館で公開
ログインしてコメントを確認・投稿する