『
名もなき塀の中の王』
何とも生々しいムショものだ。
映画の題材で刑務所生活を描くのは山ほどあるが、その中でもとりわけリアルさと緊迫度では群を抜いているかもしれない。
日本とは法律が違うのかもしれないが、英国のある成人用刑務所に未成年のエリック・ラブが収監される。(原題Starred Upの意味はここから来ているらしい。)
なんとここで服役してる父親と再会する。
愛情の伝え方が分からない親と、愛情を受けてこなかった息子が特殊な環境下で出会うとは何と皮肉な…。
皮肉といえば、エリック・ラブの名前もどう考えてもラブとは疎遠。
親らしい愛情を示してこなかった父親なのに、ムショの中でだけ親面されたら気分が悪くなるのも無理はない。
ムショにはありがちな仕切るボスや悪徳刑務官などがひしめき合う。
暴力の是非を問うのはたやすいが、原因を見つけて解決しないなら、刑期を終えて釈放することに何の意味があろう。
きっと同じことの繰り返しで、当人も周囲にとっても困惑するばかり。
社会の責任はどこにあるのか、刑務所の意義をどこに見出すのかという問いかけを感じる。
気が遠くなるほど時間をかけ、じっくりと膝を交えて怒りのコントロールを教え込もうとする人物と、旧態依然とした態度で手っ取り早く押さえつけようとする看守との駆け引きが見どころ。
主人公エリックを演じるジャック・オコンネルの鬼気迫る芝居に引きつけられる。
父親役のベン・メンデルソーンがチラリと見せる父親としての表情が堪らない。
負の連鎖を止めようとしても止める手立てが浮かばない悲しいまでのダメ親ながら、歪んだ愛情を見せる姿には複雑な思いを受ける。
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