『
アメリカン・ドリーマー 理想の代償』
アメリカン・ドリームとは言ったものだが、目的達成の大義の前には手段は正当化されるのか。
何のために成功者を目指すのか。そこに手段は問われないのだろうか。
1981年のNY、事業の成功者は手を汚すのが当たり前だったという。
それは劇中で描かれるオイル業界も同じ。
そんな中、移民のハンデを負いながらもクリーンな商売でのし上がってきたアベル・モラレス。
更なる事業拡大のために賭けに出るが、快く思わないものの邪魔が入る。
ライバル会社も銀行も多少なりとも社会的成功を収めているもの全て手を汚している。
現実論を突きつけられる中、理想論で完遂しようとする者は道化なのか。
潔癖であろうとして、得た代償には人間不信に陥りそうだ。
間接的にしか知らないが、’80年代のNYの空気の出し方が秀逸。
ラクガキだらけの地下鉄、衣装や小物類、特徴あるアメ車のデザインだけじゃなく、画質そのものまでが少し懐かしい匂いを放つ。
タバコの煙が充満するのもスクリーンでは見なくなって久しい。
アベル・モラレス役のオスカー・アイザックの冷めた…しかし内に情熱を秘めた佇まいに惹かれる。
NYという舞台と相まって『ゴッドファーザー』のころのアル・パチーノがよぎるのは私だけではないだろう。
翻ってギャングを父に持つという妻アナ役のジェシカ・チャスティンの脂の乗り具合が抜群。
監督は『オール・イズ・ロスト 〜最後の手紙〜』のJ・C・チャンダー。
荒唐無稽なアクションに頼ることなく、誠実な演出でスリリングに魅せる手腕はアベルの姿勢と重なる。
特にチェイスの部分は息をのんだ。
誰もが手を汚して生きないと成功できない時代に、あえて誠実をもってアメリカン・ドリーム実現を目指すのがよそ者(移民)というのが痛烈なメッセージだ。
冬のNY、グレーの色合いが如実に作品のそれを表す。
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