『
やさしい女 (デジタル・リマスター版)』
世の中には需要があっても、なかなかお目にかかれない作品もある。
権利問題だったり、興行面だったり「大人の事情」が様々。
不運にもソフト化されていない巨匠ロベール・ブレッソンの初カラー作品『やさしい女』のリマスター版が上映中。
ヒロインを演じたドミニク・サンダのデビュー作品としても知られる。
原作はドストエフスキー(短編『やさしい女 幻想的な物語』)というから期待せずにはいられない。
いきなり衝撃的なシーンから始まる映画で、ある一組の夫婦の回想録のような展開が見られる。
質屋を営む中年男と、若い貧乏女性は運命の出会いをする。
もっとも運命と思ったのは男の方で、すぐに結婚したはいいが上手くいかない原因が分かっていない。
常に夫サイドから語られるが、描かれるのはずっと妻。夫の存在の軽いこと。
得てしてありがちな夫婦関係ではあるが、表現のセンスの良さ…というか繊細さがブレッソンらしい。
余計な説明セリフや音楽も(劇中でレコード音は流れるが)極力避けている。
しかし、…いやそれだからしぐさや視線で物語る。
セリフの抑揚も乏しく表情も抑えられていて冷たく突き放した印象がある。
きっと監督は
演技させない演技をさせたのだろうが、この演出はかなり勇気がいる。
(ブレッソンは『スリ』『ラルジャン』を見た記憶があるが、ずいぶんと昔なので今見たら全く違う感想を持つかもしれない。)
冒頭のシーン、最初に顔がアップになるまでの下りですでに舌を巻く。
中盤、
二人向き合ってスープを飲むシーンがある。
ここで二人の違いをよく観察すると心が透けて見えるようだ。
ほとんど表情を変えないヒロインにチラリとみえる感情表現に構成の巧みさ感じた。
おそらくストールは“見立て”であるし、込められた暗喩も的確。
この映画をカップルで鑑賞して、違う解釈を持ったら危険信号かも?(苦笑)
今回もソフト化はないみたいなので気になる人はチャンスを逃さない方がいい。幻の作品のままにしておくのはもったいない。
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