トーキョーノーザンライツフェスティバル2015
続編。
『リプライズ』
デビュー作にして、クラクラするほどの技量を見せつけられる。
両親も映画業界の人らしいが、
ヨアキム・トリアーという名前を見ると推測がつくように鬼才ラース・フォン・トリア―の甥っ子なんだそう。
栴檀は双葉より…ってヤツだな。
恵まれた環境で育ったのだろう。そういう趣味の良さが感じられる。
…と同時にハナにつく。(苦笑)
よく処女作にはその芸術家の全てが表されているなんていうけど、主人公はまさに作家になることに憧れて処女作を発表しようという若者二人。
あざといまでの設定をデビュー作に据えるのだから、どれほど自信家なのかがうかがい知れる。
それは<仮想>のモノクロームという導入からして、手練れを思わせる。
内容そのものよりもスタイルやテクニックにねじ伏せられる印象か。
パズルのばらけたピースを組み立てるように構築していく様には嫌というほどIQの差を味わう。
刹那的に生きる若者像の成功と影の部分を、友でありライバル関係の二人を通して語られる作品だが、劇中で主人公が尊敬してやまない巨匠からアドバイスをもらうシーンがある。
「まあまあいいが、後半は詩的すぎる」と。
このセリフは監督自身の自虐的な解釈と受け取っていいのだろうか。
なんにせよ達観している様子が感じ取れるセリフでもあった。
処女作ながらこの年のアカデミー賞外国語映画賞のノルウェー代表作品に選ばれたんだそう。
なんか嫌いだ。(笑)
『オスロ、8月31日』
幸福とは何かという問いに正解はあるのか?
幸福でないならば、生きていくことは罪なのか?
ルイ・マルの『鬼火』の原作にもなっているピエール・ドリュ=ラ=ロシェル「ゆらめく炎」の映画化。
監督2作目、間違いなく上達している。
長編処女作はヨアキム・トリアー監督の聡明さが突出していたが、「もう少し庶民にわかるようにしないと商業的には…」と思ったのか不明だが(苦笑)、取っつきやすくなっている。
カメラワークも編集も熟練工の仕事ぶり。
麻薬中毒患者のリハビリ施設で主人公アンデシュは石を抱いて入水自殺をはかるが死にきれない。
ヤクブツに手を出す人には多かれ少なかれ精神的に余裕がない。
オスロという都会の中での閉塞感や居場所のないことで厭世的になってしまうのだろうか。
リハビリの一環でアンデシュは一時帰宅するのだが、そこで現実を再確認してしまう。
監督は主人公にも周囲にも肩入れすることなく、主人公が置かれた状況をあるがままを見せている。
街のカフェで耳をそばだてると、周囲からはささやかな日常の<幸福>が聞こえてくる。
その時のアンデシュの気持ちは察するに余りある。
観客は説得させられるのではなく、自然に理解してしまうのだ。
こういう視点が高い評価につながっているのではないか。
若者が抱えるセンシティヴな悩みが、ヒリヒリと突き刺さる。
映像詩人と言ってもいいくらいにキレのある映像の積み重ね。セリフに頼らない演出はまさに映画的である。
タイトルの8月31日は一つの季節の終わりを示す…。
その“季節”の意味は…、もうお分かりだろう。
なぜこの作家を素直に好きになれないかは、
いいとこのボンボンでイケメンで運動も勉強もできる同級生を好きになれない感じに近いかも…。(笑)
でも、友達になっておいて損はないかな。(苦笑)
『ボス・オブ・イット・オール』
『ニンフォマニアック』でコメディのセンスがあるのがバレてしまったラース・フォン・トリア―の純粋なコメディ映画。
しかしラース・フォン・トリアーだけに他の人のコメディとは一線を画す。
のっけから彼のナレーションがかぶり、「遠慮なく笑って」と言われるが、素直に笑える人がどれだけいるか。(笑)しかもスタッフ一同がビルのガラスに映り込んでいる。
わざとやっているのだからこの映画は自虐的なモノなのだろうか。
The Officeという海外ドラマがあったが、雰囲気としてはそんなところか。
デンマークのある会社では架空の社長を作り上げ、その事実を隠していたが、アイスランド人に会社売却の商談で必要になり<俳優に社長代理>を依頼することから始まるコメディ。
俳優を影武者に…というのは珍しくないが、架空の社長の設定が次第に明らかになると、嘘をついている俳優が気の毒に思えてくる。(笑)
社員もユニークな人物が多く、(理由はあるのだが)突発的な行動に唖然とすることもしばしば。
撮影が一風変わっていて、ラース・フォン・トリアーにしては奇抜というか雑な印象を与える。
それもそのはずで、「オートマヴィジョン」と呼ばれるコンピューター制御による人間には制御不能な手法を使っているのだそうだ。(笑)
おかげで予測不能な切り替えなど、あたかも内容にシンクロしているかのごとくである。
シンクロと言えば、“
お調子者でアドリブを入れて手におえない俳優”というのは、トリアーの記憶と重なるのかもしれない。(誰のことかは不明だが…)
取引先のアイスランド人社長と通訳にフリドリック・トール・フリドリクソン&ベネディクト・エルリングソン両監督をキャスティングしているのも話題の一つで、フリドリクソン監督の沸点の低い演技は必見。(笑)
ラース・フォン・トリアー映画の登場人物は精神面に難がある人が多いのはシリアスやコメディ問わずと確認できた。(ナレーターが一番オカシナ人物に思えるのだが…)

ログインしてコメントを確認・投稿する