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2015年01月21日01:42

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『エレナの惑い』『ヴェラの祈り』

『エレナの惑い』『ヴェラの祈り』

 劇場長編デビュー作『父、帰る』がヴェネチア国際映画祭で金獅子賞受賞というセンセーショナルな登場をはたしたアンドレイ・ズビャギンツェフ監督。
最新作『Leviafan(英題)』が本年度のGG賞外国語映画賞部門受賞、アカデミー賞外国語部門ノミネートというとどまるところを知らない活躍ぶりだ。

 この二作品はその間に挟まれながら、日本でなかなか公開されなかった作品。
この機会にまとめて見られるのはありがたい。(ただ、デビュー作を未見状態…)あせあせ

 『エレナの惑い』
 監督3作目。

 長回しとゆったりした移動ショット。
どっしりと構えた作風は若くして巨匠に上り詰めた痕跡がうかがえる。

 冬のモスクワ。
かの地が抱える格差社会の問題。失業率の高さ、男社会の不平等さが根底に流れる。
資産家と再婚した元看護師の妻は、むしろ家政婦か奴隷に近い扱い。
ひとえに我慢するのは、看護師をやっていた性格もあるだろうが困窮する息子の家族を支えるため。
チビチビと生活費の工面をしてやっている姿は、世の母親なら共感できよう。
しかし、老いからくる問題に直面して、自分を押し殺していた妻の心が壊れる瞬間に背筋が凍りつく。

 なんとも重苦しい問題で、一概に正解も出せない。
ヒロインは妻であるが、母であり、女でもあるのだ。
心を測る天秤は見つからない。
また魔がさすことは人間だからないとは言えない、ただその行為は釣り合うのかという問いも浮かぶ。
おそらく第三者から見ればバカバカしい愚かな行為だろうが、肉親の愛情バランスは客観性を失うことをよく知っている。

 ズビャギンツェフ監督を評する時にタルコフスキーの名前が上がるのは分かる気がする。
丁寧に映し出すスタイルで説明的なセリフを極力排除しながら、話を運ぶ力からだ。
冒頭のショットと呼応するラストが何をかいわんや。
シリアスなドラマであるが、一方ではサスペンスとしても十分魅力的。
どんよりした冬のモスクワの空が良く似合う。



 『ヴェラの祈り』
 前後するが、こちらが第2作目。

 一見、理想的な家庭に起きた悲劇。
ある日、夏を過ごすために訪れた田舎の家で起きたハプニング。
「妊娠したの。でも、あなたの子じゃない」という妻ヴェラの衝撃的な告白を受けて戸惑う夫。
この家庭も表面的には上手くいっているように見えながら、やはり父権の家庭。

 こんな衝撃発言を受けたら誰だって冷静ではいられまい。
発言の意図はどこにあるのか、そしてどこへ向かうのか…。
謎を手繰り寄せる展開、次第に明らかにされる過去の真実。二転三転する仕掛けは良く練られていると思う。

 続けてみるとわかるが監督の共通項目が感じられる。
「妻・母・女」、どれもがヴェラを表す言葉だが、自分の価値についての確認がしたかったのか。
それはとりもなおさず、この国における女性の立ち位置ということか。

 アンドリュー・ワイエスの絵画から着想を得たという景観は見事。
徹底的に構図にこだわった画面作りが特質的。
しかし傾斜に立つ家の不安定さやアップダウンの激しい道路に隠された意図は嫌でも感じる。
原因を見いだせず、どこまでもすれ違う夫婦がもどかしい。
ただ、全体のテンポがゆったりしているので、ついてゆけるかどうかは人によるか。
(タルコフスキー映画が好きな人向けか?)

 やはりズビャギンツェフ監督にとってファーストシーンとラストシーンは極めて重要なフレームなのだろう。
フラッシュバックの編集がシームレスで面白かった。
どうやって撮影したのかと驚嘆した移動ショットは最後まで謎。(笑)
本作で苦悩する夫を演じたコンスタンチン・ラヴロネンコは、カンヌ国際映画祭主演男優賞を受賞。
やりきれなさと映画の作りからどっと疲れる。

フォト



 こう見ると、1作目は見ておいた方がいいな…とも思うが、しんどそうだなぁ。(苦笑)

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