『
パガニーニ 愛と狂気のヴァイオリニスト』
音楽史の中では時折登場する<常識を超えた技巧派>ミュージシャン。
その先駆けともいうべき存在こそ、本作の主人公ニコロ・パガニーニその人。
人は過去の物差しでしか測ることができず、新しい才能は本物であっても評価されにくい。
既成概念にとらわれメディアの力を盲信する世間に向けた皮肉なメッセージを感じる。
21世紀のヴァイオリニストのスターであるデイヴィッド・ギャレットが鬼才パガニーニに扮し、“お芝居”も吹き替えなしで挑む。(笑)
長髪、長身、ロングコートに身を包み、酒と女に溺れる日々…と、
いやでも現代のロック・スターと重なってみえる。
これが俳優デビューとなるD・ギャレットだが、さすがに演技力まで“超絶”は求められないとわかっていたのだろう。
彼にはメインの演奏に集中させ、ドラマ進行はウルバー二(ジャレッド・ハリス)とシャーロット・ワトソン(アンドレア・デック)らにお任せしたのは賢明だったと思う。
ウルバーニの辣腕マネージャーぶりも今の音楽業界を彷彿とさせる。
なんでもパガニーニこそ初めて<ツアー>をしたミュージシャンだということだが、英国公演実現の苦労はハラハラさせられる。
当時の技術で可能だったのかは不明なれど、パイロもどきやスクリーンを使ったステージ上のギミックは微笑ましい。
一方、
話の下敷きはゲーテの『ファウスト』であり、冒頭の“契約書”のシーンに顕著。
ウルバーニがメフィストで、シャーロットがグレートヒェンなのは明白。
おそらくCGの活用もあるだろうが、再現された19世紀の英国がミステリアスさをまとわせていて見応えある。
無論、最大の見せ場(聞きどころ?)は5億円ともいわれるストラディヴァリウスを使ったD・ギャレットの演奏であろう。
四の五の言わず、ただ“悪魔の音楽”に酔いしれるのがベターな鑑賞ではないか。
クラシック・ファンはもとよりロック・ファンにこそアピールする作品かもしれない。
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