『リスボンへの夜行列車』
誰しもが自分の人生に満足しているとは限らない。
それは経済や名誉の意味でなく、根本的な部分で自ら生きるべき道を歩んでいるのかという問いかけは多かれ少なかれあてはまるものだろう。
スイスはベルンの学校に教師として勤務するライムント・グレゴリウスは、古典に精通していて言葉遣いも含蓄のある話し方。
頭脳は明晰で、チェスの腕前もかなりのものらしいことが映像で語られる。
しかし現状にさして不満があるわけではないものの、どこかで居場所を探している。
そんな彼が、ある日橋から飛び降りようとしているポルトガル人女性と出会い運命は大きく変わる。
医師であるアマデウ・デ・プラドが事実を元にして書いたという『言葉の金細工師』を偶然手にし、猛烈に引き込まれるグレゴリウス。
はたして橋の上であった女性は誰なのか、書籍の登場人物は存命なのか。導かれるようにリスボンへ書籍の背景の謎をたどる旅が始まる。
文学者であり、哲学者であるパスカル・メルシエによる同名原作の映画化。
ドイツで大ベストセラーとなった哲学小説という話で、原作とどれほど違いがあるのか不明だが、十分に理知的で深淵さが感じられる。(さすが哲学者をたくさん排出したドイツだけあるな〜)
平凡な人生を送る人物が波乱万丈な物語に魅せられてどんどん深みにはまって行き、頭の中で疑似体験するのが面白い。さながら大人のための冒険譚というべきだろうか。
作家は亡くなっても残された書籍が他人を感化し変えてゆく…というのは物書きとしては理想なのじゃないか?
深く読み解けばそれだけ発見がありそうな話で、メガネが壊れて新調することも<視点を新たにする>という暗喩に違いない。
はたして若い人が見て何と思うか?死を意識し始め、人生を振り返る年代になって俄然面白味がわくタイプかもしれない。
監督は名匠ビレ・アウグスト。
彼のもとに集まったキャストが渋くて豪華。
主演の教師にジェレミー・アイアンズ。他にもブルーノ・ガンツ、シャーロット・ランプリング、クリストファー・リー、メラニー・ロランなどなど。映画ファンならこれだけで心躍るのでは?
ただ、言葉が重要なファクターであるのに英語劇(訛りはあるとはいうものの…)になっているのは少し残念。
撮影が見事で映し出される(たぶん現地ロケしていると思う)ベルンやリスボンの景色は一見の価値がある。
たぶん、秋ごろル・シネマ等で公開予定。
公式サイトはまだ立ち上がっていないと思われる。
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