ようやく日本でアブデラティフ・ケシシュの映画が一般公開になった。(舌噛みそう…)
これまでは映画祭や特殊上映でしか扱われることなく、機会を逃してきたのでうれしい限り。
これを機に旧作も…とは思うけど、どうだろう?(『クスクス粒の秘密』はソフト化されるそうだが。)
『
アデル、ブルーは熱い色』
カンヌでパルムドール<最高賞>受賞とか全裸のセンセーショナルなセックスシーンとかが耳に入ってきていたが、その実は少女が<一つの恋>を通して子供から大人へ成長する物語。
生きる目的も恋の意味もボンヤリとしか分からない少女アデル。
ごくありふれた家庭からは<堅実>という言葉が浮かぶ。
そんな折、一目ぼれした美術学生のエマにより何かを確信したアデル。
人生に希望や価値を見出し、狂熱のごとく恋の炎は一気に燃え上がる。
蜜月の中にあり、二人の育った家庭の違いがズレを生じてしまうのは納得できる。
アデルに文才があると認めるエマに対して<堅実な将来像>しか描けないことが、この恋にどう影響するのかはアデルには想像がつかないのだ。
根っからの芸術肌であるエマにとって無難な生き方は人生への背徳行為でしかない。
原作はフランスのコミックという話だが、ヒロインの名前は映画化の際に変更されている。
アラビア語で“正義”を意味するアデルへの変更の意図はそれとなく頷けよう。
あくまで同性愛という形を借りているが、それは自由であることの表現であり色眼鏡で見ないほうがいいと思う。
だが、さすがにアデル・エグザルコプロスとレア・セドゥの
かなりハードな濡れ場(貝合わせまで!)を描いているので、誰かと一緒に見るなら相手は選んだほうがいいだろう。
セックス・シーンとともに大事なのは食事のシーン。
べちゃべちゃねちょねちょとパスタを食べるアデルの家庭と生ガキをオシャレにワインと合わせてスマートにたしなむエマの家庭では生理的にも隔たりがある。
それにしても肌の美しさが印象的なのは素材の良さだけでなくカメラマンの腕もあるのだろう。実に瑞々しい映像がヌーヴェルバーグ時代を思い出す。
順撮りの効果もあり、成長の様子が自然なのもよい。
タイトルの
「熱い」を「幸福」に置き換えてみるのもアリかもしれない。
クローズアップや長回しの多様と、約3時間という長尺は見るものに覚悟を与えるが、心地よい疲労感を覚える。
昨年の東京国際映画祭で上映されているのだが、なんでもボカシが入るらしいと聞いていたので、早々に海外版をゲットしていたのであった。
さて、カーテンをしっかり閉めて、戸締りを厳重にして…と。(笑)
ログインしてコメントを確認・投稿する