『
鉄くず拾いの物語』@
第14回TOKYO FILMeX2013
ボスニア紛争を描いた『ノー・マンズ・ランド』で数多くの受賞を果たしたダニス・タノヴィッチ監督が、ふと目にした新聞記事がきっかけで取り組んだ実話ベースの映画。
ボスニア・ヘルツェゴヴィナに鉄くず拾いなどで生計を立てているロマの一家に悲劇が起こる。
貧しいながらも仲睦まじい一家だったが、母が病気になった。回復には手術が必要なのだが、電気代もまともに支払えない<その日暮らし>の夫に手術の費用はあまりに高額すぎた…。
イタリアのネオリアリズモに通じるものを感じる。
ここに描かれる内容からはボスニア・ヘルツェゴヴィナの貧困問題や医療問題が浮かび上がる。
国の失業率はきわめて高く、ほとんどは正規雇用がなくて日雇いという状態。
人間らしく生きるために必要最低限の条件が整わない現実は唖然とする。
いったい法律やルールは何のためにあるのか?
タノヴィッチ監督は<守るべきはシステムか、人か>という問いかけをしているのだろう。
実際の出来事を再現したドラマは珍しくないが、事件の当人たちによって再現されるとはなんという思い切った試みか。
しかも子どもを含めて全員が演技素人にもかかわらず…だ。
作品の性質上、ごく一部は他の人に代わってもらった経緯があるようだが、可能な限り忠実に再現されたという…監督の決断と実行力には驚かされるばかり、しかもベルリン映画祭で並みいるライベルを蹴散らして男優賞受賞というご褒美までついた。
まるでタコが自分の手足を食うような状況には目を覆いたくなったが、そんな悲惨ともいえる環境でも家族愛を大切にし、<貧しても鈍しない>真面目に生きる姿には感銘を受ける。
何より事の深刻さを知らないのだろうが、子どもの無邪気な笑顔はなによりだ。
ベルリン映画祭審査員グランプリ、男優賞、エキュメニカル賞特別賞を受賞。
1月11日より新宿武蔵野館など順次公開予定
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