『
The Sessions』
人生を全うする…、言うのは簡単だが実行は難しい。
五体満足で生まれてきても心と体のコントロールは容易ではない。
ポリオが原因で首から下を動かすことが出来ず人工呼吸器機の世話になっている
マーク・オブライエン。
詩人でありジャーナリストであった彼が性行為の体験談を綴った本を基にした映画。
有名人がモデルといっても、いわゆる伝記映画の作りではない。
彼の功績はほとんど語られず、愛と生についての普遍的映画になっているから。
さすがセラピー大国アメリカというべきか、
性のセラピストというべき<セックス代理人>という職業があるそうだ。
本作に登場するヘレン・ハント演じるシェリルがまさにそれで、彼女は夫も子供もいるごく普通の主婦である。患者が正常な性行為を出来るようになるようにと、
“セッション”を重ねて治療するというのだ。このセッションの様子が実に丁寧に描かれていて、改めて気づかされることもある。
もちろん感情的に深入りは禁物だが、そう単純に割り切れるものでないことは容易に推察がつく。
マークの友人でありよき相談役として神父(ウィリアム・H・メイシー)が登場するが、キリスト教の教義と特殊なセラピーとをいかに折り合いをつけるかで葛藤する様がユーモラスに、かつ温かく描かれている。
顔しか動かせないマークを演じる
ジョン・ホークス(『ウィンターズ・ボーン』)が実に見事で、演技だというのを忘れるくらいのなりきりぶりには舌を巻く。
アカデミー賞助演女優賞ノミネートされたヘレン・ハントも堂々と裸をさらしての熱演。まさにマークのミューズと化している。
監督はベン・リューインという人物で、私ははじめて知ったのだが、
彼自身幼少の頃ポリオに罹り生涯<杖の生活>を強いられているということなのだ。
ベン・リューイン監督がこの原作に出会ったことは天啓であったろう。
マークの人生を取り巻く女性たちが魅力的に描かれていて(最初の介護士を除く)、人生の幸福について考えてしまう。
サンダンス映画祭で観客賞と審査員特別賞を受賞。
ようやく今年の主要5部門ノミネート作品鑑賞制覇できたが、これほど評価があっても日本公開未定…(ちなみに、スペイン版BDに日本語収録)。

ログインしてコメントを確認・投稿する