『
楽園からの旅人』
<やめるやめる詐欺>は宮崎駿に限ったわけじゃなく(笑)、前作『ポー川のひかり』で引退宣言していたエルマンノ・オルミ監督も撤回したのか新作を発表。
何であれ創作者たるもの必要性がある限り発表し続けるものだと思うから不思議には思わないし、創作現場に戻ってくれたのは嬉しい限り。
不法移民に悩むイタリアの現状を描いた映画は『海と大陸』などもあったが、近年の欧州映画には時折描かれる題材。
舞台はイタリアのある町で、今回もメタファーに溢れる寓話。
そこでは教会も司祭も<老い>ている。その老いはキリスト教そのものかもしれないし、イタリアそのものかもしれないが、ともかく世間から見捨てられている。
しかし、絶望感に陥った司祭に再生の道を示すのは、外の人々。
自身の職務を前にして葛藤する司祭が、その
<肩書き>を外してから本当の彼の人生がはじまるという皮肉。
廃教会にたむろし、薄い板と布キレであっという間に自分たちの“ダンボールハウス”を作るしたたかなアフリカ難民。悪びれも強がりもしないところにアイデンティティがあるのか。
天井から漏れる雨水やそれの活用など、全てが意味を持つ。
<死に体>のこちら側に対し、試練も恵みも等しく受け入れる−しかし、言いなりにはならない−難民の姿に<生>を感じる。
見捨てられたのは描かれる教会や司祭ではあるまい。
世を憂慮する最後の一文が苦く残る。
しかし「御説ごもっとも」と思いながらも、知性と生真面目さがいささか堅苦しい…か。
ログインしてコメントを確認・投稿する